上はホワイト、下はブラック… 富士山のような日本企業の身分制度を崩せ

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   海外では、幹部候補はシビアな競争環境にさらされるのが当たり前で、選別の末に強力なリーダーだけが残ります。それ以外の人たちの競争はゆるやかで、労働法規が適用され、残業はなく定時に帰れます。その代わり昇進はほとんどなく、年齢を重ねても給与は変わりません。

   責任の重さや得られる報酬から考えて、これは合理的なしくみといえます。一方、日本の場合は、なぜか幹部候補にホワイトな労働環境が保証され、それ以外はブラック労働という見事な逆転現象が起きてしまっています。まるで冠雪する富士山のようです。

   こうなってしまうのも、日本のキャリア制度が本質的に正社員=幹部候補を守る「身分制」になっているからです。私は日本の労働問題を解くカギは、このあたりにあるのではないかと思っています。

「アップorアウト」プロフェッショナルの厳しい選別

上は真っ白、下は真っ暗。なぜか見事な逆転現象が起きている
上は真っ白、下は真っ暗。なぜか見事な逆転現象が起きている

   外資系の投資銀行やコンサルティングといったプロフェッショナル色の強い会社では、「アップorアウト」というキャリア制度が採用されています。社員はアップ(昇進)するか、さもなくばアウトするか(会社を去るか)という選択肢を迫られるという意味です。

   たとえばコンサルティングの会社の場合、新卒で入社するとだいたい3年くらいで次の職位に上がる機会が訪れます。アナリストやアソシエイトという名前から、コンサルタントやシニアアソシエイトといった名前に昇進します。

   ここが1つのスクリーニング(選別)のタイミングになります。昇進できるかどうかは実力主義で、新卒で入社した人すべてが昇進できるわけではありません。およそボトム2割くらいは昇進ができないこともあります。

   昇進できない人はどうなるのか。もう1年頑張って次の年に昇進するチャンスにかける人もいれば、その時点で自分には向いていない、ついていけないと考えて辞める人もいます。

   1年留年しても昇進できなければ、ほぼ確実に辞めます。自分に向いていない仕事を続けるよりも、早めにキャリアチェンジして別の可能性に賭けた方がいいからです。

   このハードルをクリアできても、3年後にはマネージャー職に昇進するためのハードルが待っています。マネージャーのあとはシニアマネージャー、その後はディレクター、パートナーといったハードルが待ち構えていて常にスクリーニング圧力がかかっています。

   こういうしくみによって常に人材が入れ替わり、組織に新陳代謝があります。いわゆる「大量採用して、できるやつだけを引き上げる」というやり方に近いでしょう。

大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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