有名大企業の中にも「ブラックな闇」はある
3つめは、あまり取り上げる人がいないのだが、一見優良な「ホワイト企業」の皮をかぶって、裏で違法行為を平気で行う「偽ホワイト企業」である。
原因のひとつは「大きなビジネスはきれいごとではできない」という思いあがりである。価格カルテルが摘発され巨額の課徴金を支払う事件が後をたたないのも、こういう理由であり、これを「必要悪」「バレたのは不運」「これで一人前」などと肯定してやまない会社も、確実にブラック企業なのである。
もうひとつは、幹部個人の資質の問題である。大企業で幹部に出世して社会的な地位が上がると、自分が人間的に偉くなった気がして、何でもありの精神状態になってしまうのだろうか。
特にセクハラ関係の問題は、非常に多く発生している。組織ぐるみではないかもしれないが、企業体質の問題はある。これを会社の力で問題をひねり潰して表に出ないようにしたり、都合が悪い告発をした社員をクビにしたり、恫喝的に訴えて黙らせることもある。
事後対応を担う総務や人事の言い分は、何千人もの従業員を抱えれば中にはおかしな社員が事件を起こすものであり、処理にあたっては多少ブラックなこともやらなくては追いつかないというものだ。しかし、いくら企業を守るためとはいえ、不当なやり方をすればブラックと呼ばれても仕方ないだろう。
このように、ブラック企業の定義を「違法行為」に絞り込んでも、かなり多くの企業が対象になるはずだ。自分たちの主張するイデオロギーにのみこだわり、本丸をおろそかにしてグレー部分で争っているのは不毛と思えてならない。(新田龍)