「ブラック企業を単に『違法行為をする会社』としてしか捉えられない論者に、ブラック企業対策を語る資格はないんじゃないか」
前回の記事に、ツイッターでこんな批判があった。ブラック企業アナリストを名乗る私としては聞き捨てならない指摘である。私には、いまマスコミで取り沙汰されている「ブラック企業」という言葉の使い方は、「若者の使い捨て」といった曖昧で情緒的な線引きによって好調企業を攻撃しているだけのように思えてならない。
おもに批判の矢面に立たされているのはユニクロだが、同社にまったく問題がないわけではなく、他の企業と同様に改善の余地はあるだろう。しかしバランスを欠いて一企業を批判するキャンペーンによって、誰の目にも明白な違法行為を行う「真正ブラック企業」から人々の目がそらされているとしたら、それこそ大いなる問題だというのが私の言い分である。
無慈悲な鉄槌を下すべき「真正ブラック」は3種類
私が優先的に問題としたい「真正ブラック企業」は、大きく3つに分けられる。ひとつは「反社会ブラック企業」。最初から違法行為を行うつもりで存在している会社である。
暴力団のフロント企業がその代表であり、事業そのものが違法だ。こういう会社は、いくら働く人にとって居心地がよくて高給であっても、存在自体がブラックであることには疑いがない。
違法投棄を行う廃棄物業者や、違法金利でカネを貸す闇金融、顧客を騙したり脅したりして高額商品を買わせる悪徳商法など、枚挙に暇がない。
ちなみに「長時間労働」や「使い捨て」といったテーマをブラック企業の争点にしたがる人たちは、こういう会社の存在になぜか触れようとしない。
ふたつめは、傾きかけた「どんづまりブラック企業」である。高度成長期にはマシだったかもしれないが、事業環境の変化で会社が立ち行かなくなっている。
いろんな意味で追い詰められ、結果的に労働法をはじめとする法令を守る余裕もない。そんな違法状態の会社、みなさんの身近にもあるのではなかろうか。
経営者のマネジメント能力がないために、そもそも違法な労働条件でなければ会社が持たないケースも多い。こういう会社の社長の口癖は「労基法なんて守ってたら、会社が潰れる!」「政府は景気対策をなんとかしろ!」「助成金を出せ!」である。