「課題は優秀な女性の活用」退職者にも門戸開く
同社は2000年から、社員が自分の意思で異動できる「FA制度」も実施している。一定の評価基準を満たした社員に対して、会社からFA権を付与するというものである。
一時は周囲への配慮から、権利を行使したくても本人が手を挙げづらいという状況もあったが、2011年には異動のタイミングを変更することで応募しやすく改訂した。
また、同時に、各職場が必要な人材を募集し、それに対して興味のある社員が応募する「社内公募制度」を改定した。FAとは逆に、まず「ジョブありき」となる。
ある部門で今までの領域にはないような新しい仕事が発生した場合、その仕事に興味がある人、あるいはその分野に知見がある人などを募集し、それに対して関心のある社員が応募するというのが基本だ。採用の権限は部門にある。
また同社では、一度退職した優れた社員に再度門戸を開いている。
「一度外に出て、博報堂を違う目から見たうえで、改めてこの会社の良さ、面白さを感じた有能な人材は受け入れていきたいですね。外での経験を活かすことは悪いことではないと個人的には考えています」
実際に川上氏が携わった採用で、元社員の女性がいた。出産のため同社を退職したのだが、子育てがひと段落したときに“もう一度、博報堂で働きたい”と思い、採用試験を受け、優秀で能力が高かったため、採用になった。このような元社員の受け入れは制度化されたものではないが、特に女性の活用という意味で参考になる方法だ。
「優秀な女性社員の活用は企業競争力の大事なポイントになります。それには制度だけでなく、風土づくりも大事になるでしょう。時間がかかるかもしれませんが、今後、取り組んでいきたい課題の1つです」
田中実(「月刊人事マネジメント」編集部)