がんの罹患率は、加齢とともに増えていく。年齢が高くなるほど、がんになる確率は高くなるからだ。自分の親ががんと診断される可能性は、意外に高いもの。いざというときにあわてないために、そのとき何をすべきか、どんなことに配慮すべきなのだろうか。
まず大切なのは、どんな治療があるのか選択肢を知ることだ。がんの治療法は、学会などによって「標準治療」が定められている。科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、患者に推奨される治療方法のことだ。
どの治療法にもメリットとデメリットがある
日本胃癌学会では「胃癌治療ガイドライン」、日本肺癌学会では「肺癌診療ガイドライン」といった標準治療の方針とその根拠が公開されている。ただ、がんの進行状況や患者本人の年齢、置かれた環境などによって、標準治療の適用とならない場合や、判断が難しい場合もある。
例えば、がんを取り除くことができるかもしれないが、体に大きな負担がかかる「治療法A」と、副作用はそれほどひどくないが、がんの進行を抑えることを目的とする「治療法B」があったとしよう。
なにがなんでも完治させたい場合には「治療法A」を選択するだろうが、進行状況がゆるやかな場合は「治療法B」を選択するケースもある。がんという病気がとても難しいのは、どの治療法が確実なのかの判断が難しいところだ。
がんの治療は「手術」「放射線治療」「抗がん剤治療」の三大療法が中心となるが、どの治療にもメリットのほかに、少なからずデメリットが存在する。がん治療においてセカンドオピニオンが重視されるのは、このためだ。
がん治療には、医師が患者に治療内容を説明して同意を得る「インフォームドコンセント」が欠かせない。そのうえで、主治医に紹介してもらった医師からセカンドオピニオンを得てもいいし、自分で情報を集めて受けたい治療を行う医療機関を受診してもいい。
治療法の判断にあたっては、がんを患いそれを克服した人や治療している人の経験談も参考になる。がん患者やその家族が運営する「患者会」にはさまざまなグループがあるが、多くはがん別、地域別にまとまっている。同じ病気を患っているので、治療に有益な情報を教えてもらえたり、病気の悩みや治療のつらさなどを相談できたりする。