SNS疲れに一服の清涼剤 カルピスの「リア充捏造」キャンペーン

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   今年のゴールデンウィークは、谷間の平日3日間を休みにすれば10連休。しかし筆者が住むシンガポールには、そんな制度はない。休日返上で働いたという言い方も変だが、フェイスブックに友人たちがあげる楽しそうな写真には、さすがに堪えた。

   ベルリンのある大学の研究結果によると、ソーシャルメディアを使う人の3人に1人は、使用後に「欲求不満」を感じているという。自分は忙しく働いているのに、あるいはひとり部屋に閉じこもっているのに、他の人たちは楽しそうに遊んでいる――。そんな状況に嫉妬心や孤独感を高めているのだろう。

非日常体験を偽装する画像を送ってくれる

「GWなので、自然とたわむれています。うるおっています」。すいません本当は家で仕事してました…
「GWなので、自然とたわむれています。うるおっています」。すいません本当は家で仕事してました…

   そんな筆者と同じような「渇いた」ビジネスマンの気持ちを汲み取り、カルピスが「オアシスフォトファクトリー」なるキャンペーンを展開している。

   特設のウェブサイトからフェイスブックに投稿した写真を送ると、ゴールデンウィークが明けた5月3日ごろから手作業で加工されて順次戻ってくる。

   その加工は休暇中にあたかも非日常の体験をしたかのように「偽装」したもの。連休を楽しめなかった自分を偽り、友人にリア充っぷりをアピールできるなんともお節介な、参加するほど悲しくなるキャンペーンだ。

   さらに、戻ってきた写真にフェイスブックでひとつも「いいね!」がつかなければ、抽選で慰めの商品がもらえるというおまけつきだ。

   このキャンペーンは瞬く間にクチコミで拡がっていった。1次申込を開始した4月23日から2日間で1500名の枠が埋まった。カルピス広報の伊藤真利子氏も「1週間前後かかるんじゃないかと思っていました」と驚いた様子だ。

   その後、2次申込を4月27日に、3次申込を5月3日に行ったが、いずれも申込みが殺到し、結局、全部で約2000人がこのキャンペーンに参加した。

加工写真に「どれひとつとして同じものはない」

   このキャンペーンには、ツイッターで若い男性と思われる人たちから、自虐的ながらも歓迎するコメントが溢れた。

「あ、ありがたい…」
「すごくいいと思うww」
「わろたwおれに必要なのはこんなサービスだったのかw」

   伊藤氏によると、同社の目論みが当たったようだ。というのも、今回のプロモーション対象は「30~40代の日常生活で疲れや心の渇きを感じている男性」をターゲットとした新商品「カルピスオアシス」だからである。

   これまでカルピスといえば、「さわやか」「青春」「家族」といったイメージが強かった。しかし今回のキャンペーンによって、「これまでの弊社の商品とは異なるイメージを持っていただくことができた」という。新商品の認知向上に与えたインパクトとしては十分と評価しているとのことだ。

   参加者の手元に戻ってきた画像には、どれひとつとして同じものはない。それを聞いて、筆者に罪悪感がこみ上げてきた。

   「自分がこのキャンペーンに参加したことで、画像を加工するグラフィックデザイナーの連休を奪うことに加担してしまったのではないか」――。なんせ彼らは連休中、2000もの画像をひたすら加工していたのだから。(岡徳之

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