社長は「スペシャリスト」のままで経営をやっていけるのか

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「社長は社内のことをよく見ている」という信頼感が大切

   Kさんは、この一件を境に経営者としてゼネラリストになるべく意識を改め、独学で経理や財務を学んで少しでも苦手意識を払しょくできるよう努力しました。

   その結果、社内のどんな議論にも当事者意識を持って入っていくことができるようになりました。それが「社長は社内のことをよく見てくれている」という社員の一体感を生み、信頼感が強まったことで社長の考えも社員に浸透しやすくなりました。

   Kさんは、かつての自分のような考えを持つM社長に「それは間違っていますよ」と進言しました。軽んじられたと感じた部門はやる気を失って腐敗が進み、不祥事を生むきっかけにもなる。

   経営者は、あらゆる社内事情に当事者意識を持たなければならない。そのためには「脱スペシャリスト経営」をする必要があります。KさんはM社長と相談し、各部門との「定例課題ミーティング」を設け、現場の情報を共有することにしました。

   このミーティングには、他の部門の幹部社員も出席。担当部門と社長の顔色しか興味のなかった各部門の幹部が、全社的な問題について関心を持つようになったといいます。

   その後、S社の主力技術が異業種の世界的企業に採用されたという記事を目にしました。きっと営業の販路開拓が花開いたのでしょう。「発明家」から「会社経営者」への意識転換は、S社の発明企業からの脱皮をも手助けしてくれたようです。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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