先月(2013年4月)、世界最大規模の貿易展示会である中国の広州交易会に行ってきました。
幕張メッセを5,6個並べたような巨大な会場に、今年も2万社以上のセラーが自社の商品を展示しています。世界200カ国から集まった20万人を超えるバイヤーが商談を繰り広げる様子は、まるで世界中のあらゆる人種の展示会のようです。
40型のテレビが2万円台。韓国勢も敵わない
この会は中国を中心としたモノづくり企業が、輸入業者に自社製品を見せて世界中で売ってもらう交渉を行う場です。広大な会場に所狭しと作られたブースには、種種雑多な製品が並べられ、一癖も二癖もありそうなバイヤーたちがそれを物色します。
そんな催しが3週間も続き、2トンもある金庫など「誰が買うんだ?コレ」というものも多数見られたのですが、中には誰もが知っているメジャーな製品もたくさんありました。そのひとつが、テレビです。
会場内のテレビ製造会社が集まる一角を見て、私は唖然としました。20社以上の中国企業が薄型テレビを展示しているのです。
ある会社は30台ものテレビを設置し、韓流アイドルのPVを延々と流していました。そこに映る画像は日本の国産テレビと遜色はなく、値段を聞くと40型のテレビが日本円にして2万円台だそうです。
おそらく一括大量購入すると、さらにとんでもない値段になるのでしょう。日本のテレビメーカーが次の切り札と期待する4Kテレビも、普通に並べられていました。
日本のテレビが世界の最先端を行っていたのは、過去の話。技術力では韓国勢に追いつかれ、その韓国勢ですら中国勢の安値・中品質攻勢に利益を削られている。他の国が今ここにリソースをつぎ込んでも無謀であり、日本勢にも勝ち目がないように思えました。
目の当たりにすることで、心から納得できる
私のような素人が見る限り、中国製格安テレビの品質は十分視聴に耐えうるものであり、品質面での競争は限界に来ているように思えました。
さらに、低賃金労働者を使う多くの中国企業が、血で血を洗う値下げ競争をしているのを目の当たりにして、「こらあかん」と心の底から実感しました。
日本の大手メーカーの中には、すでにテレビの国内生産から撤退したり、自社生産をやめているところもあります。一方で国内自社生産にいまだにこだわる会社もあり、「テレビの国内生産の火を消してはならない」といった論評も聞かれます。
確かに雇用や技術継承の問題もあり、できれば残ってもらうに越したことはありません。しかし海外で現実に起こっていることは国内の想像をはるかに超え、ささやかな願望を打ち砕くものです。問題は国内で議論していても、解決できることでは全くありません。
知識では分かっていても、実際に目の当たりにすることで心の底から納得できるものはたくさんあります。それは個人レベルの身の振り方でも同じことです。是非、知識をつけて海外に行き、様々なものを見て、納得した上で自分の道を探っていきましょう。(森山たつを)