サラリーマンが読む「フジ三太郎」入門(5)
「共感」と「郷愁」が交錯 昭和後期の「日本人の自画像」描く

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昭和への感謝と哀切を込めた贈り物

平成2年4月23日
平成2年4月23日

   昭和後期の日本人の姿を同時代史として見事に描ききった「フジ三太郎」。それはまさに激動の昭和に育てられ、昭和を生き抜いたミスター昭和人間・サトウサンペイさんの、昭和への感謝と哀切を込めた贈り物といえるでしょう。

   平凡なサラリーマン三太郎をはじめ登場人物のほとんどは市井の名もない人々です。そこには、昭和という時代をそういう無数の普通の人々が作ってきたということへの、サンペイさんの敬意が表れているような気もします。

   そう考えると、「フジ三太郎」は実は連載漫画という形をとった、昭和後期の「日本人の自画像」だったのかもしれません。

   「フジ三太郎」は平成3年に連載が終了します。最終回は昭和の大ヒット曲「上を向いて歩こう」を踏まえた作品でした。サンペイさんは62歳、まだまだ続けられる年齢でしたが、筆をおきました。その理由は、やはり、「昭和が終わったから」ではなかったか、そんな推測もできそうです。

   これからさらに20年、40年と歳月が積み重なるにつれ、「フジ三太郎」も次第に「小津作品」の領域へと移行していくことでしょう。そしてさらに歳月が積み重なると、昭和後期の日本人の姿を伝える貴重な「映像記録」として、後世の歴史家、社会史家の学術的な研究対象になるかもしれません。

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