『タッチ』監督の教えは「デザインに迷ったら黒く塗れ!」

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アニメキャラクターは情感の受け皿としてデザインする

   D.A.ノーマンの『誰のためのデザイン?』という本は、デザインと機能の関係についての本です。単にスタイリッシュなデザインがいいデザインなのではなく、使う人の動きにピタッとくる人間中心に設計されたデザイン(HCD)が優れたデザインであると書いてありますが、アニメキャラクターも同じなのです。

   「人の動きにピタッとくるアニメキャラクター」を言いかえると、「情感という心の動きにピタッとハマるアニメキャラクター」ということ。つまり、安心して感情移入できるキャラクターということです。

   感情心理学では感情を「暴れ馬」に例えることがありますが、感情や情感という捉えどころのないものを無理に型にはめることはできません。そこでアニメでは、「暴れ馬」が自由に安心して暴れることができるデザインが必要になります。

   そのときに、シルエットが単純でわかりやすいアニメキャラクターは受け皿として最適です。子どもは丸や四角や三角などのシンプルな形が好きです。単純な形のなかに自分だけの感情の物語を紡ぎます。シンプルでわかりやすいデザインは、子どもが自分の馬を自由に遊ばせるための容器なのです。

   デザインされたキャラクターがシンプルかどうかは、黒く塗ればすぐにわかります。「キャラを黒く塗れ!」は心理学的にも説明できる大先輩の知恵だったのです。今度、アニメグッズを見かけたら、心の中でそっと黒く塗りつぶしてみて下さいね。(数井浩子)

数井浩子(かずい・ひろこ)
アニメーター、演出家。『忍たま乱太郎』『ポケットモンスター』『らんま1/2』『ケロロ軍曹』をはじめ200作品以上のアニメの作画・演出・脚本などに携わる。『ふしぎ星の☆ふたご姫』ではキャラクターデザインを担当した。仕事のかたわら、東京大学大学院教育学研究科博士後期課程に在籍。専門は認知心理学
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