「ブラック企業を何とかして」という悲鳴に耳を塞いでいいのか

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「労基法を守れば会社が潰れる」という言い訳を許すな

   「労基法なんて守ってたら、会社は潰れてしまう」などと公然と言い放つ経営者がいるが、そんな人間は経営から身を引くべきだ。法律を守ろうという気持ちが全くなく開き直りを決め込む会社は、社会が存続を許すべきではない。

   そのような会社を摘発するには、いまの労基署の権限は弱すぎる。ブラック企業の被害を受けた社員が労基署に駆け込んでも、よくて社長に「是正勧告書」が出される程度。普通なら「社長とよく話し合え」と追い返されるだろう。いずれにせよ、当の社長が無視すればおしまいだ。

   罰金や未払賃金も「カネがないから払えない」で済まされてしまうことさえある。そもそも労基法の罰則を適用するには、証拠を揃えて書類送検する必要があり、手続きのハードルの高さが泣き寝入りの原因にもなっている。

   そもそも労基署の存在意義自体が「訴え出た労働者本人の利益を守る」という役割を担っていない、という実態もある。わが国の労働行政は、高度経済成長の実現と正社員の雇用維持と引き換えに、あまりに長い間違法状態を放置し続けてきたのだ。

   今回の提言を実現しようとすれば、現行の労働行政が問題山積みであることが明らかになるだろう。提言内容については賛否両論あるが、少なくとも「これからいかに改善していくべきか」、という議論を促していく力はあると考えている。(新田龍)

新田 龍(にった・りょう)
ブラック企業アナリスト。早稲田大学卒業後、ブラック企業ランキングワースト企業で事業企画、営業管理、人事採用を歴任。現在はコンサルティング会社を経営。大企業のブラックな実態を告発し、メディアで労働・就職問題を語る。その他、高校や大学でキャリア教育の教鞭を執り、企業や官公庁における講演、研修、人材育成を通して、地道に働くひとが報われる社会を創っているところ。「人生を無駄にしない会社の選び方」(日本実業出版社)など著書多数。ブログ「ドラゴンの抽斗」。ツイッター@nittaryo
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