がんは、とてもやっかいな病気だ。手術や抗がん剤治療、放射線治療などによってがん細胞を取り除き、腫瘍マーカーなどの検査数値が正常値になったとしても、医学的に「治った」という表現を用いない。
診断上の「完治」とは、寛解状態(がんが検査で確認できない)が5年以上続くこと。常に再発のリスクが潜んでいるため、治療後も引き続き通院して定期検査を受ける必要がある。再発の「トリガー」となる要因には、ふだんの日常生活が関係しているという。
治療しても「がんの芽」は完全になくなっていない
がん細胞は、もともとは自分の細胞だ。その遺伝子になんらかのエラーが生じ、そこに多様な要因が関与して細胞が異常に増殖するようになり、最終的には正常な細胞を傷害してしまうようになる。
それも、いきなりがん細胞に変わるわけではなく、5~10年など長い年月をかけて、がん細胞に成長していくと考えられている。がん細胞の前段階である「がんの芽」は健康な人にも毎日発生しているが、免疫力が高ければそれを押さえ込み、がん細胞は発生しないとされている。
治療でがん細胞を取り除いたとしても、体内の「がんの芽」はなくなっていない。がん細胞が再発するリスクは、誰もが抱えているのだ。治療が終わったからと安心せず、再発予防という新たなステップの始まりととらえよう。
では、どのような生活習慣が再発に関係しているのだろうか。国立がん研究センターが2011年に発表している「生活習慣改善によるがん予防法の開発に関する研究」では、喫煙や飲酒は多くのがんにおいて、そのリスクの確実性が示されている。
野菜や果物は食道がんに、コーヒーは肝がんに、緑茶は女性において胃がんに、「ほぼ確実」な予防効果があるようだ。
ただし、その他の食品、栄養素に関しては、多くのがんにおいて科学的根拠が「不十分」という評価となっている。がんは発生した臓器の場所、進行状態、本人の体力などによって治療の経過がかなり異なるため、データを集めにくいという側面があるからだ。