「一人ひとりのセンスを磨け!」 社長の意味不明な大号令に部下混乱

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   思い込みの強いトップというものは、自分だけが理解している言葉で話し、周囲を困惑させることがあります。食材商社A社の営業会議の席上、就任間もない10人の新任若手営業所長に対し、社長がこんな言葉でキレていました。

「お前ら、どうなってるんだ! こんな営業成績で、恥ずかしくないのか? 話を聴いていると、営業担当者に『センス』というものが感じられない。もっと一人ひとりの『センス』を磨くような指導をしろ!」

営業所長「分からないものは指導できません」

社長、「センス」ってなんすか…?
社長、「センス」ってなんすか…?

   前年同月比3割以上のマイナスという営業成績なのですから、社長が納得できないのも無理もありません。その勢いのまま、同席していた我々コンサルティングチームに向き直ると、こう注文をつけました。

「コンサルタントの先生方、こいつら営業所長たちが営業担当者にセンスを身につけさせられるよう、至急指導をお願いします!」

   これを聞いて、チームの中に緊張感が走りました。社長が言う「営業センス」とは何なのか、それは指導によって教えられるものなのか…。

   しかし、ここで「社長、それは無理ですよ」と言えば、社長の怒りの火に油を注ぐことになるし、我々も仕事を失いかねません。一息ついて、私はこう言って引き受けました。「分かりました。早速みなさんの活動実態をヒアリングして、指導プログラムを作成しましょう」。

   会議終了後、店長からは口々に同じような疑問が出されました。

「営業センスってなんすか、それ…」
「社長の要求がよく分からない。分からないものは指導できませんよ」

   所長たちは面食らっていました。確かに彼らから見れば、社長の言っていることは無理難題にも聞こえるかもしれません。

   しかし、要は営業担当者の成績が上がりさえすればいいわけで、それを部下に指導できる所長教育をしてくれと、社長から頼まれたのだと受け止めました。「センス」の定義を決める前に、結果として求められていることは何かと考えたのです。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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