臨床心理士・尾崎健一の視点
放置すれば自殺や横領など別の問題に発展するおそれも
確かにプライベートの問題ですし、法的には会社とは関係ないのですが、会社として借金に苦しんでいる社員を突き放したり、放置したりすべきではないと思います。悩みが高じて横領や窃盗を引き起こす動機にもなりえますし、自殺や殺人といった事件に発展する可能性もあります。現状を把握するために人事はAさんに聴き取りをし、適宜相談に乗ってあげた方がよいと思います。相手が会社とはいえ、悩みを打ち明けられる人の存在は不安低減に役立ちます。
大切なことは、ひとりで悩みを抱え込まず、社会的な支援もあることを伝えることです。相談に乗る担当者が気をつけるべきなのは、会社として出来ることと出来ないことを明確にしながら情報提供することです。同情するあまり、個人的な借金を引き受けてしまわないようにしましょう。社内貸付制度があれば活用を勧めたり、地方自治体の窓口に借金返済の方法について相談したりすることなどが考えられます。