「忙しかったら人を雇え」ができるルールへ転換を
そもそも残業文化というのは、終身雇用を守るため、労使が一体となって生み出してきた共同作品だ。仕事が増えた分に応じて採用を増やせば、(後で仕事が減った時に)誰かのクビを切らないといけない。
それを避けるために「月45時間という法定の残業上限時間を超えて残業できるようにしましょうね」というのが労使間で結ぶ36協定であり、長時間残業を合法としているものの根っこである。
それを廃するのなら、当然、業務量に応じて雇用調整するツールも必須となる。要は「残業でも何でもして、今いる社員の雇用を守れ」から「忙しかったら人を雇え、暇になったら解雇していいから」というルールへの転換である。
ちょうど政府の有識者会議では、解雇規制の緩和が議論されている最中だ。できれば労働市場全体を見据えたビジョンの中で、解雇やブラックといったホットなテーマについて議論して欲しいというのが筆者のアドバイスである。
※離職率の高さも注目されているようだが、そもそも勤続年数をあまり重視していない職種では賃金がフラットであり、離職率も高い傾向がある。H17年大卒者3年内離職率は製造業で22.2%、宿泊・飲食サービス52.9%、小売業44.1%であり、政府が一概に線を引けるものではない(厚労省データより)。
※サービス残業については争う余地があるかもしれない。だが、これも「椅子に座っていた分だけ成果が上がるはずだから、その分の時給を支払え」という戦前の工場的発想が時代に合っておらず、厳密に適用すれば経営困難となる企業が続出するだけだ。