80年代アニメ「魔法の天使クリィミーマミ」からの贈りもの

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大きくなったマミファンと話すのは楽しい

   そして、記憶には「脳の記憶」と「身体の記憶」の2つがあります。十代のころによく聴いた音楽がその人の一生の生体リズムをつくるという説がありますが、この「リズム」とは身体感覚のリズムのことです。「ビート」という言葉をつかう人もいます。たとえば、ビートルズが好きだった人は、いくつになっても8ビートのリズムが馴染むといいます。

   そこで、魔女っ子ものの呪文。魔法の呪文のほとんどはステッキなどを振りながら唱えます。なので、子どもは振りつけと呪文を何度も繰りかえします。

   『魔法の天使クリィミーマミ』の変身シーンの振りつけは、パターンがひとつに決まっていたわけではありませんでしたが、ステッキを使っていたシリーズ前半では、大きなト音記号を描きながら変身することがよくありました。

   個人的な仮説ですが、この上から下に、下から上に大きく弧を描くという振りつけは「身体の記憶」に強く残る運動なのではないかと思うのです。太極拳を習っていたときに、「渦巻き円環運動は無限大に通じる」と言われたことがありましたが、マミファンがいつまでもアツいのは、このト音記号運動に秘密があると思うのは考えすぎでしょうか。

   ともあれ、大きくなったマミファンに会って、いろいろな話をするのは楽しいものです。アニメをつくっているときはいつでも「見ている子どもたちが楽しんでくれるといいなあ」と思いながら仕事をしているものですが、「見てましたよ」といわれると突然にタイムカプセルが開いたような気分になります。アニメをやっててよかったなあ、と思う瞬間です。(数井浩子)

数井浩子(かずい・ひろこ)
アニメーター、演出家。『忍たま乱太郎』『ポケットモンスター』『らんま1/2』『ケロロ軍曹』をはじめ200作品以上のアニメの作画・演出・脚本などに携わる。『ふしぎ星の☆ふたご姫』ではキャラクターデザインを担当した。仕事のかたわら、東京大学大学院教育学研究科博士後期課程に在籍。専門は認知心理学
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