今度は九州の農協で横領 またしても「パート1人」に集金任せきり

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地域性の強さを逆手にとって監視の目を強める

   横領事件が相次ぎ、逮捕者まで出して業務改善命令に直面しているにもかかわらず、A農協がパート一人に集金を任せきりにしたのはなぜか。

   地域性が強く、職員や組合員(農家)がお互いをよく知っている組織では、アットホームな職場風土ができる。働く人は「働きやすい職場の雰囲気」と歓迎するだろうが、それがぬるま湯体質につながると、相互チェックが甘くなりやすい。

   職員には「多少お金をごまかしても見つからない」という認識が生じ、経営幹部にも「いくら不祥事を出しても組織がなくなりはしないだろう」という甘えやおごりが生じる。

   そんな環境で働く職員がギャンブルで失敗でもすれば、「ちょっと借りるだけ」「多少のことはみんなやっている」「自分は給料以上に働いているから」と自己を正当化し、堕ちるところまで堕ちるのに多くの時間はかからない。

   地域性の強さがぬるま湯体質につながるのなら、それを逆手に取って緊張感を高めるしかない。例えば、組合員(農家)、地域住民などのステークホルダーが不審な点に気づいたら、農協を監督する県に通報できるホットラインをつくり、厳しい目で農協職員の活動を見守るよう呼びかければ、横領の抑止効果は格段に高まる。県にも、不祥事再発には「退場」命令を出すくらいの厳しさを求めたい。

   この4月には各農協にも希望に満ちた新入職員が加わったことだろう。彼らを路頭に迷わせないためにも、今度こそ、実のある業務改善を図ってもらいたい。もちろん、彼らにも入口の段階で健全な危機意識を刷り込むことが大切だ。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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