地域性の強さを逆手にとって監視の目を強める
横領事件が相次ぎ、逮捕者まで出して業務改善命令に直面しているにもかかわらず、A農協がパート一人に集金を任せきりにしたのはなぜか。
地域性が強く、職員や組合員(農家)がお互いをよく知っている組織では、アットホームな職場風土ができる。働く人は「働きやすい職場の雰囲気」と歓迎するだろうが、それがぬるま湯体質につながると、相互チェックが甘くなりやすい。
職員には「多少お金をごまかしても見つからない」という認識が生じ、経営幹部にも「いくら不祥事を出しても組織がなくなりはしないだろう」という甘えやおごりが生じる。
そんな環境で働く職員がギャンブルで失敗でもすれば、「ちょっと借りるだけ」「多少のことはみんなやっている」「自分は給料以上に働いているから」と自己を正当化し、堕ちるところまで堕ちるのに多くの時間はかからない。
地域性の強さがぬるま湯体質につながるのなら、それを逆手に取って緊張感を高めるしかない。例えば、組合員(農家)、地域住民などのステークホルダーが不審な点に気づいたら、農協を監督する県に通報できるホットラインをつくり、厳しい目で農協職員の活動を見守るよう呼びかければ、横領の抑止効果は格段に高まる。県にも、不祥事再発には「退場」命令を出すくらいの厳しさを求めたい。
この4月には各農協にも希望に満ちた新入職員が加わったことだろう。彼らを路頭に迷わせないためにも、今度こそ、実のある業務改善を図ってもらいたい。もちろん、彼らにも入口の段階で健全な危機意識を刷り込むことが大切だ。(甘粕潔)