「好奇心」が高じてカナダでアニメーターになる
もう一冊の本、『何でも見てやろう』は小田実さんという人が書いたノンフィクションです。同じ高校の先輩が交換留学生としてアメリカにいくときに、「これを読んだらどうしても海外に行きたくなったんだ。読んでみるといいよ」と教えてくれた本でした。
『何でも見てやろう』は文庫にもなっているので、読んだことがある人もいらっしゃるかもしれませんが、文字どおり「何でも見てやろう」と著者がアメリカ留学から帰る途中に、バックパッカーとして世界中を歩き回った体験記です。
高校卒業後、先輩の言葉は忘れていたのですが、今思えば、私が27歳でカナダで仕事をしてみようと思い立ったのも、「見れるものは何でも見てやろう」と思ったからでした。若いうちに北米のアニメ制作を、実際に自分の目で見て体験してみたかったのです。
カナダで仕事をすることになったとき、まっさきにスーツケースに入れたのもこの3冊でした。高校生のときにこの本に出会わなかったら、「人より長く考えること」や「短時間の休息で効率をあげること」もなく、「何でも見てやろう」と思うこともない仕事人生だったと思います。
人からすすめられた本が、私の場合は仕事の基本的な考え方になりました。この時期、新社会人の人は先輩から「読んでみるといいよ」と本を贈られることもあると思います。いい出会いがありますように願っています。(数井浩子)