アメリカでは「がん患者に対する差別禁止」が法律に明記
がんサバイバーシップは、ただ声をあげるだけのものではなく、いかに当事者の声を聞き、社会システムや風潮を変えていくかが重要となる。たとえば、がん患者にとって最も重要なのは「がんの治療」だが、医療費負担も深刻な問題である。
2010年に一般社団法人CSRプロジェクトが行った調査によると、定期的な収入があった20~69歳の就労者の約7割が「がん罹患後に減収した」と回答。実際、約9%の患者は、収入減による「治療方法の変更・中止」を余儀なくされている。
がんを克服しても食事の量や内容を制限されたり、「重い物を持ってはいけない」などと生活に制約を受けるがんサバイバーは多数いる。すべてが元通りになるわけではないのだ。
「乳がん経験者は温泉やフィットネスに行きにくいなど、心理的な問題もあります。小児がんのサバイバーは発症年齢が幼い分、さらに厳しい現実があるのです」(桜井さん)
こうした多様な悩みを拾い上げ、より生きやすくするために具体的な研究を行い、打開策を提示していくことが、がんサバイバーシップの主たる意義といえる。
がんサバイバーシップ発祥の地であるアメリカでは、がん患者に対する差別の禁止や、就労関係のフォローが法律に明記されている。日本でもこのような動きが広まり、病気を経験した人が自分らしく生きられる社会を作っていくべきだろう。(有井太郎)