企業が従業員を解雇する時に金銭で解決することについて、安部首相が言及したことが話題となっている。
金銭による解雇というのは、外資系金融機関で広く行われている手法である。私は外資系企業で実際にこれを経験してきたが、このやり方こそが今の日本に有効だと思っている。そこで今回はこれについて考えてみた。
手切れ金をもらって次の進路を前向きに考える
私は外資系金融機関の4社に勤めてきた。転職にあたっては、ヘッドハンターの手引きで自主的に退職したこともあれば、会社都合による退職すなわちクビのときもあった。
外資系にいる限りクビというのは避けがたいもので、たとえ個人に非がなくとも会社の戦略の変更や日本撤退といった理由で「戦力外通知」を受けるリスクはどんな人にもつきまとう。「外資系は怖い」というイメージはこんなところから起きているのかもしれない。
外資系企業が従業員に辞めてもらおうとする場合は、一般的に「割増退職金」といった名の手切れ金を提示することになる(「カネによる解決」というと聞こえが悪いが、カネ以外の解決方法がないこともまた事実だ)。
この場合の会社側の最大のリスクは、「こんな端金(はしたがね)で辞められるか!」と従業員から訴訟を起こされることにある。会社としては余計な争い事に巻き込まれたら面倒だ。
そこで、従業員がゴネることのないような金額を提示することが必要とされる。私は多くの実例を知っているが、「それだけもらえるのなら辞めてもまあ良いだろう」と思える金額を出す場合が多い。
一方、従業員としては、その金をもらって退職するか、またはそれをはねつけて会社とたたかうか、という二者択一となる。当然ながらほとんどの人が退職という道を選ぶことになる。
法廷闘争をくりひろげて仮に勝ったとしても、その後ハッピーになれる可能性は低い。それならば、手切れ金とともに一旦引き下がって次の自分の進路を前向きに考えていこう、となる。