臨床心理士・尾崎健一の視点
「価値観の多様性」知る取り組みが抑止力に
パワハラには、大きく2つの対策が考えられます。ひとつはガイドラインを設け、やってはいけないことを列挙することです。どのような発言が脅迫となり、名誉毀損や侮辱となるかは、だいたいはっきりしています。いくらA君の行為が悪くとも、叱責の中で「俺の力で仕事をできなくしてやる」とか「親の顔が見たい」といった発言があれば一発NGでしょう。抵触した上司は、厳しく処分すべきです。
もうひとつは、ガイドラインで割り切れない部分について社内で意見を交わすことです。すべての事例を検討できなくとも、人の価値観の多様性を知る取り組みが想像力を高め、ハラスメントの抑止力につながります。企業防衛の観点からグレー部分は厳しめに判断せざるを得ませんが、不必要な締めつけは職場を萎縮させます。先進的な会社では、職場の人間の捉え方が多様であることの認識を高めるために、複数事例について「どのように感じるか」をアンケートしたり、研修で意見を出し合ったりしています。