「心よりお詫び」もう通用しない。業務プロセスの洗い直しを
Bの横領が発覚したのは、県の調査がきっかけだ。それも、昨年末に受けた業務改善命令に基づく改善計画の一環として行った調査である。Bが不正を始めたのは、2回目の業務改善命令が出された後。この組織は一体この5年間、何をしていたのか…。
この期に及んで、A農協側は「管理体制が不十分だった」と述べているが、もう弁解の余地はゼロだ。理事長以下経営トップ、そして直属の上司の管理責任は極めて重く、「心よりお詫びする」といっても誰も信用しないだろう。
度重なる命令にも一向に改善しない事態に業を煮やした県は、今年1月から専任の職員3人をA農協内に常駐させて、監督を強化している。
不正の再発防止には、かなり抜本的な改革が必要になるだろう。全事業の現金・預金取扱い業務を見直し、どこにどのような横領の機会があるか、そこで働く職員に不正の動機や正当化の要素が生じやすくなっていないかなどを、県職員や外部有識者の力も借りて徹底的に洗い出すところから始めるべきだ。
「まったく農協という組織は…」とレッテルを張ってしまうのは失礼だが、他の農協でも横領の報道は少なからず目に付く。A農協を反面教師として、今一度組織内の管理体制を見直してもらいたい。ステークホルダーである農家の方々も、自分たちが汗水たらして貯めたお金を食い物にされないよう、経営陣に対する監視の目を強めたほうがいい。(甘粕潔)