「やらされ仕事」は「自分の仕事」へのジャンピングボード

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全力を尽くす経験が飛躍へのターニングポイントに

   毎回、悩みもがきながらも一心不乱に新体操シーンと取り組んでいました。するとある日、『タッチ』の新オープニングで、その新体操カットがつかわれていました。

   その後、魔法少女モノで変身シーンを担当したときには、新体操リボンの演技にヒントを得て、南ちゃんのダンスの動きを応用しました。

   そうこうしているうちに、制作スタッフに「彼女は大変なカットが好きらしいよ」と思われたらしく、あるとき、20秒弱の「長尺のカット」を頼まれたことがありました。

   それはテレビアニメ『彼氏彼女の事情』のオープニングのラストカットでしたが、さすがにやってもやっても終わらず、上がったときにはかなり達成感がありました。このときのカメラワークは演出になってから役に立っています。

   ベストセラーを連発している知り合いの編集者は、新人のころ「たまたま上司から振られた仕事」を「自分の仕事」にすべく全力を尽くしてきたことが、プロとしての仕事力が飛躍するターニングポイントだったといいます。

   このように「残りモノ」や「やらされ仕事」には仕事力を高めるチャンスがあります。もし今度、「だれかから振られた仕事」が来たら、「自分の仕事」を高めるジャンピングボードだと思って、思いっきり踏みこんでみることは大事だと思います。(数井浩子)

数井浩子(かずい・ひろこ)
アニメーター、演出家。『忍たま乱太郎』『ポケットモンスター』『らんま1/2』『ケロロ軍曹』をはじめ200作品以上のアニメの作画・演出・脚本などに携わる。『ふしぎ星の☆ふたご姫』ではキャラクターデザインを担当した。仕事のかたわら、東京大学大学院教育学研究科博士後期課程に在籍。専門は認知心理学
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