4月1日の今日は、愉快なウソが許される「エイプリルフール」。職場で同僚や部下にまんまと驚かされたり、笑われたりした人もいるかもしれない。
しかし、そんなお遊びの日も、企業広報にとっては真剣な大勝負の日になりつつある。インターネットの発達により、数多くの企業が「自社への関心を引きつけるウソ」のネタを作って、ウェブサイトで話題づくりを競っているからだ。
東スポとシャープは「不参加」自体をネタに
NAVERまとめの「今年もすごい!各社の #エイプリルフール ネタを更新中」には、19時現在で50を超えるネタがリンクされている。
「はなまるうどんが『まるごとダイオウイカ天』を新発売」
「ショッカーがサイボウズのグループウェアを導入」
「カヤック、経歴詐称を認めます」
といった、ひとめでネタと分かる笑えるものから、「Googleマップに『宝探しモード』新登場」「ツイッター、最大141文字まで投稿できる有料サービス開始」のように、よく読まないと意味が理解できないものまで、さまざまに工夫が凝らされている。
株式会社バーグハンバーグバーグは、「代表取締役 シモダテツヤからの薬物乱用に関する大切なお知らせ」というサイトを開設。経営者が薬物使用?と思いきや、薬物を乱用しないよう呼びかける政府広報的な内容だった。
一方で、東京スポーツが「報道機関だから本当のことしか伝えたくない」と宣言したり、シャープの広報が「理由はなにとぞ…なにとぞお察しください」と断ったりして、参加しないこと自体をネタにする手法も見られた。
各社の広報には、年々プレッシャーが高まっていると思われるが、どういう点に気をつけているのか。バイドゥ社の事業戦略・マーケティング部リーダー、村田裕美氏に話を聞いてみた。
バイドゥ社はアンドロイド携帯向けの日本語入力アプリ「Simeji(しめじ)」を開発しているが、このたびアプリに搭載されている高精度の予測変換機能を移植したホンモノのしめじを開発した、と特設サイトで発表している。名称は「Simeji Next」だ。
「単なる賑やかし」や「不愉快なウソ」のさじ加減は難しい
担当者としては「ユーザーの目には見えにくい変換機能の『テクノロジー』『精度』『安心・信頼』を分かりやすく伝えることをねらった」という。「Simeji Next」の動画では、しめじ内部の繊維菌糸組織が発する微弱電流や胞子までも表現しており、ディテールにこだわって制作されたことが見て取れる。
また、広報的な目標を立てて「単なる賑やかし」で終わらないよう、プロモーションしたい製品とネタとの距離に知恵を絞ったという。エイプリルフールのネタが「不愉快なウソ」となって会社のイメージダウンにつながらないようにすることにも注意したそうだ。
各サイトを見てみると、話題化に成功した企業も、試みが功を奏していない企業もある。エイプリルフールに便乗する企業も増え、競争も激化している。
ネット上で拡散するのは、不愉快ギリギリの強烈なウソだったり、伝える内容が何だったか忘れてしまうような面白いネタだったりするもの。そのあたりの微妙なさじ加減は難しい。(岡 徳之)