「余計な残業をしたくない」「残業代はちゃんと支払って欲しい」――。多くの会社員が願っていることだが、なかなか実現できないと嘆く人も多い。とはいえ、解決方法は意外と簡単ではないようだ。
ある会社では「残業代は全額支給」「残業時間は可能な限り削減」を徹底しようとしているが、それによって業務負担がさらに増えてしまったという。社員からは方針見直しを求める声もあがっており、人事担当が頭を抱えている。
クレーム対応が遅れてお客は怒り、社員はウツに
――ネット系企業の人事です。弊社の創業者は「仕事ができるヤツは、やりたいだけ仕事をやっていい」という考えの持ち主です。成果のあがる残業は積極的に認め、残業代も青天井で支給していました。
ただ、調子に乗って働きすぎて体調を崩すものが出て、労働基準監督署からも「過重労働の疑い」という指導を受けてしまったため、やむなく軌道修正しています。
今年度から一転して「残業時間の削減」に取り組み始めました。本社の施策として、社員のパソコンのログイン時間を制限し、持ち帰り残業を防ぐためにパソコンの持ち出しやUSBメモリの使用を禁止しました。
各部門の管理職は、残業の上限を超えそうになった人にアラートをいれ、他の部下に振り分ける対応を行っています。しかし最近は、残業規制によって「仕事に支障が出ている」と方針の見直しを求める声が上がり始めています。
「お客さんから急ぎの見積もりを頼まれても、すぐに出せない」
「仕事が立て込んでいて、クレームに迅速に対応できずにお客に怒られた」
「以前より残業時間が増えて、上限近くになってしまった人もいる」
仕事に余裕がなくなり、同僚のミスに対して厳しくなったり、責任の押しつけ合いが生じたりするなど、かえって職場の緊張が高まっているという指摘もあります。
ある社員は「精神的に追い詰められている。ウツになりそう。病気になって休みたい」と管理職に相談を持ちかけているそうです。過重労働を防ぐために行った残業規制のために、ウツの人が出るなんて想定外なんですが、どういう解決法があるものでしょうか――