組織は頭から腐る――ホテル職員7人が2200万円横領

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横領の連鎖を招いた「内部通報制度」の不備

   このような不正を防ぐには、紛失、盗難、横領のリスクが最も高い現金の取扱いはできるだけ少なくしたい。完全なキャッシュレスは無理にしても、例えば、一定金額以上の取引は、振込手数料を自社負担としてでも銀行振込にすべきだろう。

   あわせて、特に現金取引の場合は領収書の発行を徹底して、記録を残すことも不正防止につながる。その上で、取引先と現金を授受する者と社内の帳簿処理をする者は明確に分け、入出金記録の第三者チェックをできるだけ頻繁に行う。

   とはいえ、ホテルの支配人のようなトップによる不正は、ダブルチェックなどの機能を無力化させてしまう。実際、上司の命令にノーと言うのは難しく、支配人や役員となればなおさらだ。そんなときの最後の砦となるのが「内部通報制度」だろう。

   公立学校共済組合は再発防止策として、「抜き打ち検査や公認会計士など専門家による会計処理のチェックを行う」「内部通報制度のあり方を見直す」などと述べている。通報窓口を社外に設置したり、利用方法について周知徹底するなどしていれば、もっと早く組合にアラームが届き、横領の連鎖も防げたかもしれない。

   ホテルの人心は相当乱れているだろうが、今こそ組合トップの健全かつ毅然としたトーンを浸透させ、これらの対策を確実に実施して欲しい。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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