グローバル化の流れを敏感に感じ、海外経験を積もうとする学生たちが増えている。それも単純な「海外観光旅行」ではなく、現地でさまざまな仕事に携わる「海外インターンシップ」という形で参加しているようだ。
海外インターンシップを運営する特定非営利活動法人アイセック・ジャパンによると、2010年に日本から海外への「インターン生送り出し事業」に参加した学生は、合計410名。2013年は1000人近い学生の参加が予想されており、3年前と比較すると倍以上に増加している。
日本企業に「海外慣れした日本人」の需要高まる
海外インターンシップの内容はさまざまだ。「セミナー型」と呼ばれる数日間のものもあれば、職場の実務に数週間携わるもの、さらに数か月から数年の長期にわたって勤務するものもある。
仕事の種類も思いのほか幅広い。海外企業の事務職で働いたり、貿易業やホテル業、テレビ局などの現場に携わるものから、乗馬や家庭犬のトレーニング、海洋生物の保護などに関わるものまで多種多様である。
花屋やパン屋などでアルバイトしながら現地語に慣れるプログラムもあれば、インターン先で宿泊や食事が提供されるので費用が安上がりですむもの、能力に応じて給与が支払われるものもある。
インターンシップは、海外ツアーよりも現地の生活に入り込むことができるので、異文化を深く学びたい学生に人気がある。外国語を使う機会が多くなるので、語学力をアップさせたい人に適しているという評価もある。
こういったプログラムに学生が参加する理由には、キャリア形成を意識している側面がある。外国語が堪能なうえ、異文化に果敢に飛び込んでいける人を求めているのは、外資系企業だけではない。海外拠点を持っていたり、新たに海外進出をねらったりする日本企業の需要も高まっている。
現地の人たちとコミュニケーションを取りながら、現地の日本企業との交渉を円滑に行える「海外慣れした日本人」が求められている。学生側からすれば、果たして自分が企業側のニーズに応えられるか判断する良い機会となる。
運営団体「甘えが許されない環境と覚悟すべき」
この流れは経済産業省も後押ししており、昨年は大学生・大学院生を対象に「GLAC」(GLOBAL ACTIVITY OF JAPANESE、リクルートキャリアが委託され運営)というプロジェクトを立ち上げて、インドやベトナムの現地法人に年間100名を渡航費無料で派遣する事業を行っていた。
また日本の大学には、海外の大学とインターンシップ生を交換する事業を行っているところもある。明治大学では、英語力アップを目的とした「セメスター(学期)留学」に加え、米ウォルト・ディズニー・ワールドでの6カ月間のインターンシップに参加できるプログラムを行っている。
インターンシップの運営方針は各団体によっても異なるので、必ずしもすべてのプログラムが厳しいということではない。とはいえ、学生だからと遊び半分で参加されても、受け入れ側は当惑してしまう。語学の勉強や文化の学習など準備を怠らず、現地の仕事に本気で携わることを考えるべきだろう。
プロジェクトアブロードは、医療系や出版・報道メディア系、法律人権系のインターンシップを得意とし、インドやアフリカでの看護職や、モンゴルの出版社で働く若者などを送り出している。担当者は海外インターンシップの意義について、こう説明する。
「職場のメンバーとして参加するわけですから、甘えが許されない英語オンリーの環境で本格的な実務に携わると覚悟すべきです。厳しい条件ですが、その中で一生懸命に頑張れば自信につながりますし、将来につながるキャリア形成のきっかけとなります」