日本を一歩出てみると、飲酒運転に対して比較的寛容な国が少なくないことが分かる。飲み屋で一杯引っ掛けて、自分が運転するクルマで帰るなんてことは海外では日常茶飯事だ。
飲酒運転の厳罰化を進める日本人からすれば悪しき習慣としか思えないが、体格も体質も違う彼らは「基準値以内であれば問題ない」と考えているらしい。そんな海外で、呼気中のアルコール濃度をスマートフォンで即座に測定できるサービスがいま注目を集めている。
息を吹きかければアルコール濃度を計測してくれる
米カリフォルニア州バーリンガムに拠点を置くIT企業が開発した「ブレスメーター(Breathometer)」は、iPhoneのイヤホンジャックに挿すことで、呼気に含まれるアルコール濃度を計測してくれるガジェットだ。
専用のアプリを起動した状態で、このガジェットに向かって息を吹きかけると、数値とゲージでアルコール濃度を、色で「クルマを運転できる状態かどうか」を教えてくれる。
過去の記録も保存してくれるので、自分の経験を振り返りながら、運転して帰宅するべきか、タクシーや電車などの公共機関を使うかを判断できる。
グループで飲み会を開き、閉会後にメンバー全員がアルコール濃度を測定し、基準以下だった人が運転を引き受けるといった、米国ならではの使い方も想定されているようだ。
このガジェット、実は現在開発中であり、今年の7月から順次発売されるという。にもかかわらず米国で注目を集めているのは、「インディゴーゴー(indiegogo)」という海外のクラウドファンディングサービス(ネットを通じた資金調達サービス)で、3月26日時点で7.6万ドル(約714万円)を超える資金集めに成功し、現在も金額を増やしているからだ。
飲酒運転に厳しい日本では流行らない?
米疾病予防管理センターの調査によると、米国内では2010年に1年間で1億1000件を超える合法な範囲(血中アルコール濃度0.08mg/ml未満)での飲酒運転が行われたという。一日あたり約30万件だ。
また、米運輸省道路交通安全局が2001年3月に行った調査によると、3人に1人が一生のうちに飲酒運転による衝突事故に巻き込まれると言われている。ブレスメーターへの注目は、そうした状況に対するアメリカ市民の問題意識の表れかもしれない。
一方日本では、規定のアルコール濃度に達していなくても、運転前に酒を飲んだ形跡があれば酒気帯び運転になることがあるほど飲酒運転に対しては厳しい。ブレスメーターに対する需要は、そこまで大きくないかもしれない。
しかし、飲食店が飲酒運転を幇助したと言われるリスクを回避するために、店舗に導入する可能性があるかもしれない。クルマで来店した客が飲酒していないかどうか店員が聞くだけでは、客側がごまかすこともできる。しかし、帰りがけにブレスメーターを使ってもらい、異常値が出た場合にはタクシーを呼ぶルールにすれば、問題を防げる。
なおブレスメーターは、基準を上回るアルコール濃度の数値を計測した場合、ローカルのタクシー会社に配車を依頼する機能も実装する予定だという。スマートフォンを活用した新しいビジネスとしても、これから面白くなりそうだ。(岡 徳之)