「俺ができたんだから、お前にもできるはず」を押しつけるモーレツ社長

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どう伝えるか「社員は自分とは違う人間である」

   そんな状況にT部長は、「結果を急いで失敗し自信をなくすよりも、顧客にじっくり向かって怒られる方がマシ」と判断し、社長からの責めを一手に引き受けているのでした。

「社長は社長になるような人なんだから、ちょっと特別に人なんですよ。社長ができたことは、決して皆ができることじゃないんですよね。彼にはそれが分かっていない」

   その一言が、問題の核心を突いているように思いました。社長には理にかなっていると思える指示も、社員にとっては全く理にかなわない理不尽な指示になってしまうことが間々あるのです。社長と社員では年齢も違いますし、考え方も能力もやり方も性格も立場も違います。

   高度成長期の昔と低成長期のいまでは、顧客の状況もまったく違います。もっと言えば、お客だって「相手が旧知のS社長だから」新しい仕事を発注していることもあるでしょう。

   「それは社長の体験であって、社長だからできたんです」と言いたくても、社員は面と向かって言うことができません。社長という立場の強さを理解しないと陥りやすい過ちです。これが行き過ぎると、パワハラ状態に陥ってしまいます。

   結局、S社長には「社員は自分とは違う人間である」「人間は簡単には変えられないし、人のタイプに合ったやり方を見つけさせるのもマネジメントだ」ということを伝えなければならないのでしょう。しかしその機会は、今のところまだ訪れていません。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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