臨床心理士・尾崎健一の視点
始末書は強要できなくても「顛末書」は命令できる
A君にしてみれば一方的に相手が悪いのかもしれませんが、会社としては犯罪につながるおそれのある行為を放置しておくのは、本人にも会社にもリスクがあります。反省しているかどうかは別として、まずは事実を確認するために「顛末書」の作成を命じてみてはどうでしょう。会社は違反行為や事実を報告させる顛末書を、業務命令の一環として提出を命ずることができます。
そのうえで、A君に本当に非がないのかを確認し、もしなかったとしても再発防止のために「当面は○○エリアの飲み屋には行かない」「午後○時以降は行かない」などの措置をとることもあり得ます。仮に明らかにA君に非があったことが発覚したときには、必要に応じて警察への出頭を勧めることもあるでしょう。また、本人から仕掛けたものでなくても何度もケンカをするようでは会社の評判を落としますので、うまく逃げるスキルも身につけさせる必要があると思います。
(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。