日本のアニメは1秒24コマでつくられています。北米で仕事をしたときに、アニメも国によってはフレームレートが異なるということを知りましたが、基本的には、日本では24コマ分を撮影したものが1秒となります。
アナログからデジタルに移行したばかりのころ、デジタルのフレームレートに合わせて30fps、つまり1秒を30枚分に換算して作画をしていた時期もありました。枚数が増え過ぎてコストがかさんだため、結局、1秒24コマに戻りました。
100分の1秒の「普通のツール」では仕事に不便
アニメーターや演出は、コンテに指示されたカットごとの演技のタイミングを「タイムシート」というものに落としこんでいきます。音楽でいえば五線譜のようなタイムラインを設計する譜面を、アニメではタイムシートといいます。
このタイムシートはA3ほどの大きさで、1枚が6秒分です。「グリコ、バナナ、チヨコレート」と12歩歩くとタイムシート1枚分、144コマとなります。
このタイムシートに、アニメーターや演出はコンテに指示されたカットごとの演技のタイミングを落としこんでいくのですが、問題がひとつあります。
ほとんどのアニメーターや演出は、演技やセリフのタイミングを計るためにストップウォッチを使っているのですが、いつも秒数ぴったりの演技というわけにはいきません。たいていは、「5秒78」とか「3秒18」など、中途半端な秒数になります。
24分の1秒の世界と100分の1秒の世界をつなぐためには、細かな計算が必要になります。しかし、もしも24分割のストップウォッチがあれば、換算する必要はなくなります。
「そんなストップウォッチがあったらいいのになあ」
必要は発明の母とはよく言ったもので、それを特注で作ってしまった監督がいました。彼がまだスタジオジブリで演出をしていたときに、メーカーと協力して1秒24分割のアナログのストップウォッチを開発し、限定で販売したことがありました。