横領したカネが裏社会に流れるのも問題
不正防止の観点からいえば、経理責任者だからといってカネの扱いをオールマイティにするのはご法度だ。いや、むしろ責任者だからこそ、現金・預金管理の細かい事務にはタッチさせるべきではない。「職務の分離」という内部統制の基本だ。
過激かもしれないが、これらの事件を教訓にして、経理責任者には以下のような「禁止令」を出してはどうだろう。
1.会社の現金、預金の入出金手続きを自ら行ってはならない
2.早朝、深夜、休日など、一人で仕事をしてはならない
3.単独での接待・被接待は厳禁とする
4.在任中は、ギャンブル、キャバクラ等の遊興は厳禁とする
5.これらの禁止行為を行った場合は、懲戒処分の対象とする
もちろん、現金、預金の動きは、監査部門などが厳しくチェックする。中小企業であれば、社長自らがチェックするか、顧問税理士や公認会計士に多少フィーを上乗せして監査させる。抜き打ちチェックをすればさらに効果的だろう。
また、AやBのように、横領してまで非合法なギャンブルやキャバクラにのめり込んでしまう人は、詰まるところその背後に隠れている反社会的勢力にカネを吸い取られているという実態にも目を向ける必要がある。
犯罪収益移転防止法でマネーロンダリング対策をしたり、暴力団排除条例による締め付けを厳しくしても、このような形で企業が裏社会の食い物にされてしまっては、効果は半減だ。
横領防止は、自社の資産を保全するだけでなく、反社会的勢力の資金源を断つためにも重要な取り組みなのである。そしてもちろん、大切な従業員に人生を棒に振らせないためにも。(甘粕潔)