現在の日本は、少子化によって若者の労働人口が目減りしていく傾向にある。そこで今、徐々に着目されているのが「産後の女性」や「シニア」といった、「働きたいのに働けない」という層だ。この層を労働市場に押し戻す流れのひとつに、「コラボワーク」という新しい働き方がある。
活かせるスキルを持ちながら、「不安」を抱え、ふみ出せないでいることも
出産後の女性や専業主婦、定年を迎えたシニア層は、働きたくとも仕事を探すのは難しい。厚生労働省が発表した人口動態統計によれば、一人の女性が生涯に出産する子どもの数は、2011年の時点で1.39人。出生数全体も105万806人と過去最少になった。出産後の復職への困難さなどが、女性の出産意欲を低下させているのかもしれない。一方で、定年後も働きたいと考えるシニア層も3割を超える(高齢者の地域社会への参加に関する意識調査※2008年内閣府調べ)が、体力的な面から労働時間に制約を抱える場合も多い。
しかし両者ともに、スキル面で劣るわけではない。シニアは職能や育成スキル、問題解決能力などに長けている場合が多い。女性も過去の社会人経験や家事・育児の経験などから、複数の仕事をこなすスキルを持っていることが多いだろう。
それでも、そうした就労経験が活かされる機会が少ないのは、当事者のメンタル的な部分も一因かもしれない。例えば、出産後の女性なら「育児など家庭の事情を理解してもらえるか」、シニア層なら「若い人の中に一人で入っていけるか」という不安を、それぞれが抱えている。
ワーカー同士が調整・協力する「コラボワーク」
そうした制約条件を取り払う取り組みのひとつが、リクルートジョブズが「2013年のトレンド予測」の中で提唱した「コラボワーク」だ。コラボワークは、自分自身で業務量や業務内容の選択を行い、同じワーカー同士が調整・協力しながら業務を完成させるという就労スタイルだ。
例えば、ポラリスが運営する「セタガヤ庶務部」では、チラシ作成を請け負った際、ラベル貼りやデータ入力などのように工程を小さな単位に分け、フェイスブック上で希望者を募る。するとワーカー同士が、同じくフェイスブック上で自分のやりたい業務量や業務内容をエントリーし、定員に達したらチームが完成する仕組みになっている。体調不良など、ワーカーが突発的に業務をできない状態になっても、ワーカー同士で調整し合う。
似たような取り組みとして「ワークシェアリング」がある。コラボワークが「ワーカー同士の調整・協力」が肝要になるのに対し、ワークシェアリングではマネージャーの役割が必要になる。ひとつの仕事を分割し、ワーカーに振り分ける役割だ。さらに、仕事を振り分けられたワーカー同士は独立して作業をすることが多く、調整・協力をすることも少ない場合が多い。
もちろんコラボワークでも、マネジメント業務が完全に不要になるわけではない。仕事を分業しやすい単位で分割することや、ワーカー同士が相互に助け合いやすい雰囲気を、ウェブ上やリアルな場を通じて促進することが必要だ。前出の「セタガヤ庶務部」では、コワーキングスペースを設置したり、研修を実施するなどし、リアルでも相互協力しやすい環境をつくっている。さらに、責任感の強いワーカーを一定数確保しておくことも、コラボワークを成功させる秘訣だろう。
女性やシニア層のみならず、就職難や障害者支援といった領域にも、応用が望まれるかもしれない。