会社が社員を守ろうとしてリスク対応力を失わせている
日本人は、通常の資本主義の国ではありえないような保護された社会で生活してきた。これは心地よい世界である。
・多くの企業は従業員が可能な限り一生働けるように頑張ってくれる(逆に、アップル社やグーグル社で定年まで働けると思っている人はほとんどいない)
・苦境に陥った業界や企業は、可能な限り政府が助けてくれ、負け組が作られないようにしてくれる
・銀行が破たんしても、預金は(たとえ預金保険対象外の大口定期預金でも)ほとんどの場合に100%守られてきた。そのため、我々は預金に対するリスクをほぼ意識しなくてすんでいる
・武力の行使は永久に放棄しているので、戦争は起きないはず、である
・小中学校では飛び級も落第もなく全員が平等に進級する(欧米では「むやみに進級させるよりも学年相応の学力をつけるのが大事」とされる。フランスでは15歳以下の4割が落第している)
若い人が(不平不満を口にしつつも)海外に行きたがらないのももっともだ。しかし、これにより人々の牙を抜き、サバイバル能力を大幅に減衰させていることも事実だ。
「終身雇用」を信じて安穏とした日々を送っているサラリーマンは、いったんリストラを宣告されたら路頭に迷うことになる。会社が社員を守ろうとすることが、かえって社員のリスク対応力を失わせているのだ。
タレブは、そういうサラリーマンが一番フラジャイルだという。