日本のサラリーマンが「世界で一番もろくて壊れやすい」理由

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   ナシーム・タレブは、現代もっとも刺激的な作家・学者の一人である。彼の新著“Antifragile”(アンチ・フラジャイル、未邦訳)を読み終えたので、今回はその感想をベースに自由に綴ってみたい。

   フラジャイルとは英語で「もろい」とか「壊れやすい」といった意味の単語であるが、ここでは「リスクに対応できない」といった意味に使われている。

   タレブはこれにアンチ(=反)をつけて新しい言葉を作った。これは「リスクに対応できる」ということであり、さらにはそれを超えて「適度なリスクと対峙することにより鍛えられ、破滅的な状況を避けられる」という意味となる。

タレブいわく「近代の日本人は時限爆弾の上に座っている」

   本書では、我々がアンチ・フラジャイルになることが如何に重要か、どうすればそうなれるか、が説かれている。

   この世の中はリスクだらけである。しかしだからといって、常にリスクを避けるように生活していったらいずれ大きな問題を生じる危険が待っている。世界は雑菌だらけだが、かといって正常な人間が無菌室でずっとすごしたら免疫力を失ってしまう。

   飛行機は墜落事故で多くの犠牲者を出してきたが、飛ばし続けたおかげで我々はメリットを享受できる。子どもは軽微な怪我をしていくことでリスクについて学ぶ、といったことだ。我々はある程度のリスクに普段から直面することで、アンチ・フラジャイルになるよう学習していくのだ。

   これは特に日本人が教訓とすべきことだと思う。タレブはこう書いている。

「アメリカの強みは、試行錯誤をし続ける能力である。それに対し、近代の日本では失敗することは恥とされるのでリスクを隠す。そのため(問題が顕在化せず)結果として時限爆弾の上に座ることになる」(注:筆者による自由訳)

   確かに日本社会はある意味、とても親切である。目先のリスクや不便さや恥を一生懸命取り除き、我々の意識から外してくれる。

小田切尚登
経済アナリスト。明治大学グローバル研究大学院兼任講師。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ等の外資系金融機関で株式アナリスト、投資銀行部門などを歴任した。近著に『欧米沈没』(マイナビ新書)
Antifragile: How to Live in a World We Don't Understand
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