就活サイト経由でエントリーシートを提出しても、面接に進めるケースが少ない――。そんな悩みを抱えている人もいるのではないか。企業がすべての書類をていねいに確認し、隠れた才能を発見できればいいのだが、それだけのコストをかけられる企業は多くない。
そこで、学歴や職歴でフィルターをかけ、残った人の中で詳細な選考を行うことになる。多くの企業がこのような方法を取るため、「どの会社でも門前払いされてしまう」という求職者が出てきてしまうのが現実だ。
しかし、書類選考で外された人の中にも、仕事に対する適性がある人がいるのは当然。学力とは別の力を持っているのに、書類では伝えられない人もいるだろう。そんな人に向けて、リクルートが「就職Shop」という新たな求職窓口を開設している。
キャリアコーディネーターが本人に合った会社を紹介
「就職Shop」の特徴は、選考書類がなくても面接が受けられるところだ。リクルートが企業を訪問して集めた求人から、キャリアコーディネーターが求職者に合ったものを紹介し、面接の設定までしてくれる。
申込みは「就職Shop」のサイトから、氏名や生年月日など最低限度の個人情報と、面談希望日を入力するだけ。学歴や職歴などは不要だ。その後、東京(銀座)、横浜、千葉、埼玉、大阪の5か所の窓口で、直接詳しい相談が受けられる。
キャリアコーディネーターと面談する意味は、求人情報をもらえることだけではない。就活がうまくいかずに自信を失っている人は、往々にして、
「自分に合った仕事がどんなものか分からない」
「面接でどう自己アピールしていいか分からない」
という悩みを抱えているものだ。このあたりの問題についても、キャリアコーディネーターが適性の整理などをサポートしてくれるので、自分に合った会社選びや面接対策につなげることができる。
「自分は営業しか応募できない」と思い込んでいた男性が、チームづくりの適性を見込まれてメーカーの製造職に就職したケースや、「私は事務しかできない」と決め付けていた女性が、人柄とマメさを買われて販売支援会社の営業職に決まったケースも。
自動車ディーラーでの営業がうまくいかず、事務を希望していた男性が、面談の後に業界を変えて「大手システム会社のユーザーサポート」に就職したケースもあるという。自分の思い込みを正すには、経験豊富な専門家との面談が効果的だろう。
中小企業の求人倍率は大企業の5倍以上
就職Shop推進部部長の木村樹紀氏は、就活に行き詰る人には「相談できる人がいない」という特徴があるという。書類選考や面接で一度失敗してしまうと、そこで大きく挫折してしまい、就活が停滞してしまう人が多い。
しかし「相談できる人」がいれば、自分だけでは気づかなかったアドバイスをもらえたり、励まされ、再び動き始めることができる。
「内定獲得には、求人倍率が高すぎない会社を探したり、応募数を増やしたりする工夫がポイントになります。また、受ける会社のことを知ろうとする努力も大事です。そして『動き続けること』。応募すれば必ず結果は出ます。失敗することも多いですが、就活し続ければいつか、自分と合う企業と出会えるでしょう。そのために『就職Shop』のキャリアコーディネーターを十分活用してください」(木村氏)
「就職Shop」で扱われているのは、従業員300人未満の中小企業が中心で、首都圏および大阪周辺の企業がほとんどだ。2006年4月の営業開始から累積で参加企業は4768社、利用者数は6万8518人にのぼる。(2013年1月末時点)
『第29回ワークス大卒求人倍率調査(2013年卒)』によると、従業員300人未満の中小企業の大卒求人倍率は、2012年3月卒で3.35倍。2010年3月卒の8.43倍と比べると大幅に下がっているものの、従業員1000人以上の大企業の0.65倍と比べるとかなり高い。
中小企業としても、自社の力だけで有力な求職者を集めることは簡単ではない。数少ない求職者から選考するよりも、「就職Shop」に集まった人の中から紹介してもらった方が有意義な「出会い」が増えるのではないだろうか。