アベノミクスのおかげで、例年以上に春闘が注目されている。総理、金融大臣が揃って経団連に賃上げ要請するなど、今年の自民党はまるで在りし日の故・民主党を見るかのような労働者寄りの姿勢に終始している。
これから労働者の賃上げは進むのだろうか。実際に「安倍総理にこたえる」と言って社員の賃上げを明言したローソンを例に考えてみよう。
正社員と非正規の格差は拡大する
まず、ローソンで賃上げ対象となったのは、正社員3300人ほど。店舗のオーナーや約20万人のバイトは関係ない。仮に安倍総理のいうようにデフレ脱却して、これから物価が2%ほど上昇し続けたとすると、3300人の正社員は(ある程度は)それにつられて昇給させてもらえるだろうが、パートは実質的な賃下げとなる。
同じことは日本中の正社員と非正規雇用、大手と中小下請け企業の間で起こるだろう。要するにアベノミクスというのは、非正規雇用や下請けの労働者を賃下げして企業活動を後押しするというものなのだ。経営者にとってはありがたい話だろうが、社会の格差は間違いなく拡大することになる。
ひょっとすると「ある程度景気が良くなれば、労組も非正規のために少しはお金を回してくれるんじゃないか」と思っている人もいるかもしれないが、そんなお人よしな労組なんて存在しない。
筆者の知人に、大手広告代理店とテレビ局社員の共働き夫婦(世帯年収3000万円超)がいるが、口癖は「ボーナスが下がって生活がとても苦しい」である。人間は永遠に満足しない生き物なのだ。
アベノミクスをもろ手を挙げて歓迎する人の中には、どうもそのためのコストを負担させられる側の人が多いように見えるのだが、気のせいだろうか。