12月に就職活動が解禁されて3か月あまり。2月23日付け産経新聞のコラムによると、就活生と接した各企業の採用担当者からこんな手厳しい声があがっているという。
「非常識な学生が多すぎる!」「なぜそんなに自己中心的に振る舞うの…?」
特に非常識さが表れていると批判の的となっているのが、会社説明会の急なキャンセル「ドタキャン」。ひどい時には「事前連絡なしのキャンセル」が申込みの数割を占めることもあるようだ。
「出席率6~7割前後」は社会人も同じ
学生相手に就活ノウハウを教える内定塾講師の長尾政彦氏は、増加するドタキャンの背景について、コラムで次のように分析している。
「最近の就活生は、一定の規律やモラルが求められる取り組みに対して、責任感や義務感が欠如しているということではないでしょうか?」
ネットを利用した就職活動の普及によって「企業の選考を受ける」行為の敷居が下がっており、予約に対する「責任感や義務感」の欠如を招いているという。
勉強やプライベートの用事が急に入った人もいるだろうし、とりあえずの気持ちで予約したので当日になって行くのが面倒になる人もいるだろう。複数の説明会が重なり、一件しか行けなくなったケースもありそうだ。
だが、こうした理由でドタキャンするのは、イマドキの大学生ばかりなのだろうか? あるコンサルタント会社社長のブログによると、製品ベンダーなどによるビジネス関連の無料セミナーの出席率は「おおむね6~7割前後というのが一般的」だという。
仕事を抱えた社会人のビジネスセミナーと、就活生の会社説明会を単純比較できないが、無断欠席あるいは直前欠席しているのは同じこと。社会人でも同じ程度の出席率なら、多忙な就活生にばかり厳しい基準を求めるのは酷なような気もしてくる。
実際、ネットには企業の採用担当者と思われる人から、無断欠席されても特に気にしないという書き込みもある。
「開催前の忙しい時期に電話入れられたら逆に面倒だ。丁寧にありがとうとは思うが、その程度」
ある程度のドタキャンは織り込むしかないか
そもそも説明会やセミナーを企業が無料で開催するのは、数多くの参加者を集めることが自社のメリットになるから。ドタキャンを減らすためには、高額な費用を設定すればよいが、それでは参加者が減ってしまう。
結局は、ぜひとも参加したくなるような魅力的な説明会メニューを準備するしかない。「やっぱりなんかつまらなそう」と思わせる企画ばかりなら、ドタキャン率はさらに増えるだろう。
ある程度のドタキャン率は、あらかじめ見越しておくべきだと開き直る人もいる。自分に明らかな不利益が出なければ、利己的な態度をとるのは普通のことだというのだ。
「大学生が非常識だというくらいでビビッてるから、国際競争に勝てねぇんだよ」
企業だって社会的責任を果たさず、義務を守らないくせに、学生にだけ注文を出しているのはおかしいと、筋違いと思える批判をする人すらいる。
「労働基準法をまともに守っていない会社がほとんどだからな。学生の非常識を責められたもんじゃないだろう」
ただ、こういう流れがさらに増えれば、約束をきちんと守り、どうしても守れないときは礼儀正しく詫びる学生が、担当者の好感度を上げるチャンスが増えるかもしれない。
とはいえ、学生の間には困ったときの「詫び文」のマニュアルが出回っているという話もあり、誰が本当に誠実な学生なのか、見分けるのは簡単ではなさそうだ。