統制重視の「イエスマン採用症候群」なら当然そうなる
部長が採用したいと思っても、社長がダメと判断したケースが結構ありました。その多くは「調和を乱す」「暴走の不安」といった理由によるものです。
一方、社長が「採用」と判断した人の書類には「まじめそう」「従順」「素直」といった言葉が並んでいました。「積極性のあるヤツがいない」という社長のグチは、実は社長自身の採用方針に原因があったのです。
これは、言ってみれば「イエスマン採用症候群」。雑談の中でそのことをやんわり伝えると、社長はあっさり「そうか…。そうかもしれない」と認めました。
「先代から会社を引き継ぐことになって、中途採用に社内の調和を乱されたくないと思ったのかもしれない。反抗されないかと不安だったんだね。皆とうまくやって活躍しそうな社員より、自分の言う事を素直に聞きそうなヤツを取ろうと思ったんだろう」
また、自分には父親のように自力で会社を立ち上げた経験がなく、マネジメントに自信がなかったとも告白してくれました。面白いことに、男性社員にはハードルを高くする一方、担当部長の判断に任せた女性社員の中には、ユニークな人材もいることが分かりました。
検討の結果、今後の採用面接は担当部長と総務部長に任せ、意見が分かれたときにのみ社長面接を行うことにしました。以前よりもかなり権限委譲したわけですが、これによって現場の課題に対応できる人材を選ぼうというわけです。
実際このやり方で採用し始めたところ、社長によれば「なかなか抜け目のないタイプ」が採れたとのこと。「違うタイプが1人入るだけで、周りもずいぶん変わるものだなあ」と、社長はやや不安そうに苦笑いしていました。(大関暁夫)