休職明けの職場復帰で「地方転勤」なんて許されるの?

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   うつ病休職者にとって、職場復帰は大きなハードルだ。心身に負担をかけないように、仕事も職場も以前と変えず、なおかつ軽減した業務量や労働時間からならしていくのが理想的である。

   しかし、会社としては休職中にそのポストを空席にしておくわけにもいかない。とはいえ「後釜」を手配すると、今度は復職者の居場所に困ってしまう…。ある会社の人事は、まさにそんな状況に追い込まれて頭を抱えている。

2つの選択肢も「体調崩す」と拒否

   ――製造業の人事です。うつ病で半年間休職していた中堅社員のAさんから、復職の意向が伝えられたのですが、勤務先をめぐって職場が混乱しています。

   Aさんは入社以来7年間、本社の技術部門に所属しています。休職が決まった後、技術部長はBさんを中途採用し、後釜として働いてもらっています。会社の業務を考えると、Aさんのポストを空けておくことができなかったからです。

   Bさんは順調に仕事を進め、新しいプロジェクトも立ち上げました。復職の意向を聞いた部長は「彼が戻る場所は今のところないなあ」と言うので、ちょうど欠員が出た営業部門ではどうかとAさんに打診しました。すると彼は、

「ちょっと待ってください。うつ病から復職するのは『原職復帰』が基本じゃないですか。いきなり慣れない営業に追い出すなんて。体調を崩すのは分かりきってるのに、ひどい話ですよ」

と憤慨します。弱ったなと思い、技術部長に相談したところ、地方の開発拠点でAさんのスキルを生かせそうなポストを探し出してきてくれました。しかしAさんからは、

「復職先が転勤? そりゃないですよ。僕には家族もいますし、一家で引っ越せないので単身赴任するしかないですけど、病後の身には重過ぎます…」

と再び拒否の返事が。こうなると会社としてもどうしようもないので、退職勧奨や解雇を考えざるを得ません。そういうことは可能なのでしょうか――

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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