臨床心理士・尾崎健一の視点
理不尽な叱責は「パワハラ」と言われるかも
気になるのは、A君への部長の叱責の仕方です。ルールが不明確のまま、部長の「常識」の範囲で評価が変わるようでは、部下は安心して仕事ができません。接待が「営業活動の一環」というのは考え方として間違っていないでしょうが、販売費のように売上や利益に直結したことが明確になるものではないでしょう。会社によって異なるとは思いますが、接待費とは一定の取引があったり、それが将来見込まれたりする相手に対して、上限を決めて固定費的にかかるものと考えるところもあり、A君もそう捉えていたのではないでしょうか。
今回の部長のような叱責は売り言葉に買い言葉だったのだと思いますが、このようなA君の視点からすると理不尽と受け取られる可能性があり、交際費の使い方に対する注意のしかたとしては配慮に欠ける気がします。A君としてもかなり気分がよくないと思いますし、パワハラと告発されるおそれがあると思いました。
(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。