火中の栗を拾うことは「玉砕」や「自己犠牲」とは違う

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経験に基づく自信だけで突っ走るのは危ない

   勇気を振り絞って火中の栗を拾うことは尊いことですが、「経験に基づく自信」がある人ほど失敗しやすいもの。拾おうとする「栗」の中にあるリスクを確認し、何をどうすれば最大の失敗を避けられるか考えることをおろそかにしてはなりません。

   携帯ゲームの開発会社に勤務するKさんという人がいます。会社はコンテンツを保有する会社と合弁会社を立ち上げることになり、代表者を誰にするか社内公募がありました。

   Kさんは、社内で1人だけ手を挙げました。仕事が大変なのはわかっていましたが、前職で合弁会社づくりを経験していたこともあり、それなりに自信がありました。

   しかし、Kさんは思わぬ形で苦労を強いられることになりました。コンテンツ会社の関係者と会食する写真をフェイスブックに載せたところ、辛らつなコメントがついたそうです。

「あんな会社と仕事するなんて終わりでしょ」
「いつか刺されますよ。ご愁傷様」

   そこで合弁先パートナーの素性を詳しく調べたところ、評判は最悪でした。他の取引先との裁判をいくつか抱えており、ネット検索すると「ブラック」という言葉が登場する始末。

   しかし自分から手を挙げた手前、「やっぱりやめます」と降りるわけにはいきません。Kさんは、泥舟に乗っているような心境になってきました。

   その後、この合弁相手は強引な経営姿勢のツケで業績が悪化、プロジェクトは頓挫しました。Kさんは元の職場に戻されましたが、心底ホッとしたそうです。もしあのままプロジェクトが実現していたら、社会的にも再起不能になっていたかもしれません。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
「高城幸司の社長ブログ」
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