東京・六本木のITベンチャー・タイマーズが、ウェブサイトを作成する代わりに「まかない飯」を提供してくれる飲食店を募集していることは、すでに話題となっていたが、このたび店舗が決まったという知らせを受けて取材に向かった。
期間限定の「社員食堂」に決定したのは、タイマーズの事務所にほど近い「シャムロック六本木店」。店舗を運営するディナーラッシュが「回数券」を発行し、系列である六本木の他の2店舗のほか、新宿と渋谷、中野の店舗でも使えるよう便宜を図ることになったという。
店舗オーナー「若い人と関わるのも勉強になる」
昨年11月の告知から1か月足らずで十数件の問い合わせがあり、応募のあったすべての店舗と面接を行った。ディナーラッシュからは「回数券を使えばディナーやアルコールもOK。コーヒー飲み放題」という条件が提示され、最終的に決定した。
ランチメニューと夜のパスタ、おつまみに使える回数券は、社員ひとりあたり月30枚が支給され、社員5人の半年分で900枚にもなる。当初の企画は「ランチだけ」だったことを考えると大収穫で、「エビでタイを釣った」と言ってもいいのではないだろうか。
ディナーラッシュのオーナー・泉一雄氏は、30代後半のノリのいい男性。プロジェクトに応募した理由について、面白そうだったからと笑顔で話す。
「ちょうど店のサイトを作ろうかなと考えていたところだったので、IT系の人たちからアドバイスをもらえたらいいな、くらいの軽い気持ちでした。タイマーズの社員は全員20代だし、若い人と関わるのも勉強になるといった期待もありましたね」
回数券は2月15日から使用可能となっており、すでに社員の食事のほか、打ち合わせや懇親会の場としても使われているという。
もちろん回数券と引き換えに、系列店舗の紹介を含むウェブサイトの制作や、ソーシャルメディアを使ったマーケティングのアドバイスが求められている。これだけ手厚いもてなしを受ければ、もう失敗は許されない。
タイマーズCOO「自社の技術で地域貢献できれば」
プロジェクトを提案したタイマーズではカップル専用アプリ「Pairy」を運営しており、ウェブサイト制作はお手の物。COOの田和晃一郎氏によると、当初から「社員の食費削減」だけでなく、会社が保有している技術やノウハウを活用して地域貢献をしたいというねらいがあったようだ。
「僕らも地域のイチ中小企業。近隣のコミュニティとどうやったら接点を持てるだろうかと考えたときに、一番近くにあったのがランチなどで毎日のように利用する飲食店だったのです」
ウェブサイトの開設は4月中を予定しており、店舗側へのヒアリングも進んでいるところだ。お店が満足できるサイトができたら、これまで近くて遠い存在だった双方にとってWin-Winな関係となることができるだろう。
タイマーズでは、この取組みのスタイルを「誰でもまかないプロジェクト」として解放し、企業や個人から申請があれば「まかないプロジェクト」のロゴ(日本語または英語)を提供してくれるそうだ。
8月半ばまでの半年間の契約が終わった後は、プロジェクトを継続するかどうか未定という。他のお店からの引き合いもあることから、別の店舗で継続するということになるかもしれないそうだ。(池田園子)