今年も所得税の確定申告が始まった。
あらかじめ給料から源泉徴収されるサラリーマンには「自分と確定申告は無関係」と思われる向きも多いが、近年ではネットビジネスなど「副業」による経費を計上して節税に励むサラリーマンも増えているという。その手法はNHKでも紹介され、ネット上の話題となっている。
注目の節税法は「二足のわらじ」
サラリーマンが節税に目の色を変えるのも当然だ。2013年1月から復興特別所得税が新たに導入されただけでなく、健康保険や厚生年金保険の保険料が引き上げられ、14年春からは消費税が8%へとアップする。
アベノミクスの成果が出る前にすでに大増税時代が到来し、天引き後の給与明細書を前に肩を落とす給与生活者も少なくない。
そうした思いを受けて今、雑誌やネットではサラリーマン向けの節税法を紹介する記事への関心が高まっている。節税のキーワードは「副業」だ。アフィリエイト収入やネットショップの開業、講演など本業とは別の収入源を持つ人が増えているとされ、一説にはサラリーマンの約3割が副業をしているとされる。
そしてこの副業で個人事業主となり、家賃や光熱費などさまざまな経費を計上すれば、サラリーマンでも合法的に節税を果たせるというのだ。
都内出版社に勤務する30歳代男性によると、休日などを利用したフリーライター業によって、副業の稼ぎは年間40万円程度になるという。出版社からの課税対象収入は年に300万円ほど。ライター業の経費計上をしなければ計340万円に税金がかかる。
だが、取材経費として家賃・光熱費の一部や交通費、通信機器代などを50万円ほど計上すると、副業では10万円の赤字に。「事業所得と給与所得の損益通算」により課税対象は290万円となり、所得税が還付されるほか、住民税も減少する仕組みになっている。
不正な「脱税」は詐欺罪に問われることも
18日放映のNHKニュースでは、サラリーマンの傍ら、副業として経営コンサルタントとして活動する40代の男性の事例を紹介。経費計上でコンサルタント業の赤字が100万円となったことで、所得税と住民税を合わせて約30万円節税できたという。
節税が行き過ぎて不正な脱税に手を染めてしまう人も出ている。2月15日には副業を隠れ蓑にした脱税行為をサラリーマンに指南していたとして、東京の経営コンサルタント会社社長が東京地検に所得税法違反で逮捕された。
この社長は全国各地で節税セミナーを開いては、架空の副業を設定してそこで赤字が出たと確定申告すれば「本業の所得税が還付される」と参加したサラリーマンに説明し、所得税計2500万円を脱税させていたとされる。不正申告したサラリーマンも重加算税などの処分が課される見通しという。
副業の赤字を申告して税金が還ってくるケースは、あくまで副業自体に事業として実態があり、計上した経費も事業との関連が認められる費用に限ってのこと。毎年赤字を計上すれば事業としてみなされにくく、私的な費用を経費に丸め込めば言い逃れのできない脱法行為となる。
売上の架空計上に至っては、詐欺罪に問われるおそれもあるそうだ。
2月15日の脱税事件は、これまで「チェックが緩めだった」(税務関係者)サラリーマンの副業に対する警告でもあるという。小遣い稼ぎの節税で、本業がクビになってしまっては元も子もない。