不動産や小売店、飲食店など、地域に根ざしたビジネスで集客を行うとき、どんな手法を使うだろうか。テレビなどマスメディアに広告を出すと費用がかかりすぎるし、主要ターゲットである地域住民に知らせるためにはロスが大きすぎる。
そんな事業者に重宝されているのが「地域広告」である。折込チラシやタウン誌などで、地域業者の広告を見かけたことがあるだろう。塾や美容室、自動車修理や医療機関、リフォーム業者や霊園、求人など。そんな地域広告がインターネット上に掲載されている意外な場所がある。それが自治体のホームページだ。
「月2000円」のコーナーもある大阪市のホームページ
自治体のホームページを毎日チェックする人は多くないが、引っ越しや結婚、出産、葬儀など大きなライフイベントの際に訪れたことのある人もいるだろう。地元市民に向けた広告を掲出する場所として、自治体ホームページは有効かもしれない。
広告スペースは、ほとんどが有料だ。人気の横浜市は、トップページに年間500万ものアクセスがあり、広告費は年84万円。けっこうな値段だと感じるが、これは例外であって、月1万円から5万円程度のところも多い。
大阪市のホームページには、「大阪市市民の方へ」というページの下に「人生の出来事―こんな時は?」というコーナーが設けられている。「引越」のカテゴリには、転入届や転出届、転居届など必要な手続きが紹介されている。
このカテゴリには月5000弱のアクセスがあり、広告費は月3000円。現在は、こんな文字が踊るバナー広告が並んでいる。
「製造より5年以内の家電、傷みの少ない家具、その他不要な物はお売り下さい」
「小回りのきく引っ越し。お荷物1コからOK」
「ダンボール・包装素材を買うなら」
「お部屋探しなら 大阪市内全域お任せください」
死亡届などが紹介された「お別れ」カテゴリのアクセスは月1400件程度だが、広告費は月2000円とさらに安価だ。老人ホームや葬儀業者、税理士事務所などユーザーとの親和性が高いバナー広告が並んでいる。提供するサービスにもよるが、1件でも受注できれば元が取れる場合が多いのではないだろうか。アクセス2万強で月7000円の「職員等採用(大阪市関係の求人情報)」というコーナーもある。
「自治体お墨付き」のイメージアップ効果も?
電通の「2011年(平成23年)日本の広告費」によると、マスコミ4媒体やインターネット広告などを除く「プロモーションメディア広告費」の規模は約2兆1000億円あまり。この中には、屋外広告や交通広告、タウン誌や折込チラシなどの地域広告が含まれている。
今後、タウン誌や新聞の部数が減少する可能性もあるが、広告出稿先として自治体ホームページも選択肢のひとつになるのではないか。広告を出す事業者が増えることで、自治体ホームページの情報や機能が拡充され、それによってアクセスが増えるという好循環が生まれるかもしれない。
広告掲載に当たっては自治体の審査を受ける必要があるが、これによって「自治体のお墨付き」という見え方になるので、事業者のイメージアップにつながる可能性もある。
なお、広告出稿の期間や期限は、自治体の予算編成スケジュールに連動しているので、掲載前の早い段階で締め切られてしまう場合が多いことに注意が必要だ。広告受付は、自治体が自前で行っているところと、委託している広告代理店に申込むところがある。各自治体のホームページで確認してほしい。(岡 徳之)