いま国内で営業をやっている人は、なかなか辛い時期だと思います。市場が冷え込む中で、何とか今期の営業目標を達成しても、翌年はさらに上の目標を言い渡される。いつになったら景気は回復するのだ、と思っている人は多いでしょう。
そもそも日本の多くの業界は、下りエスカレーターのまっただ中にいます。顧客の工場は次々と海外に出て行き、自社製品を使ってくれるお客さんは年々減っている状態です。普通に今まで通りの営業をしていては、営業成績は下がっていきます。下りエスカレーターで立ち止まっていたら、どんどん下に下がっていくように――。
成長市場に身を置くことで獲得できた「成功体験」
この状況は、新人営業マンにとってさらに過酷です。すでに顧客と知識を持っている人でさえ油断すれば下がっていく場所に、何も持たずに足を踏み入れるのですから。
私が話を聞いた20代のAさん(男性)も、つい2年前まではそんな状態だったとか。IT製品の営業マンとして仕事を始めたものの、何をやってもうまく行かない。1年間かけて、1度も受注がとれなかったそうです。
そんな彼を見て、上司がアジアのある国に1年間の転勤を銘じました。仕事は全く同じ新規営業、扱う製品も一緒です。しかし、違うのは市場でした。
日本の工場が次々と減る一方で、アジアのその国には日本から移転してきた工場が次々と建設されていきました。どの工場もすぐにシステムを設置し増強しなくてはならないため、訪問するたび見込み客が増えていく状態でした。
顧客も急いでいるので意思決定に時間をとられることも少なく、きちんと説明すればすぐに売上が上がっていきます。
1年間で数十件の営業をこなす中で、お客様との信頼関係の築き方、ニーズの把握の仕方、説明の方法を学び、何よりも成功体験を積むことにより自信をつけた彼は、日本に帰ってきてからも少しずつ受注を取ることができるようになったとのことでした。