保険契約の更新時期などに合わせて、「商品内容の見直しをしませんか?」と保険会社から連絡がくることがある。多忙な中で急に言われても、面倒な気持ちが先に立って「これまでと同じでいいです」と言ってしまいがちだ。
しかし、保険商品はここ数年で大きく変化しており、単純に継続更新すると損をすることも少なくないようだ。具体的にどんな変化が起きているのか。オリックス生命の商品開発部長・越川直毅氏に商品比較をしてもらい、違いを指摘してもらった。
ネット販売と「掛け捨て」で保険料が安くなっている
越川氏によると、この10年間に起きた保険商品に起きているイノベーションは、「規制緩和」と「インターネットの普及」、それに「医療技術の進歩」の影響が大きいという。
規制緩和の具体的な内容は「付加保険料の自由化」だ。顧客が支払う保険料には、保険金の支払いにあてられる「純保険料」と、保険事業を運営する経費にあてられる「付加保険料」がある。付加保険料は2006年4月に金融庁の認可対象から外れ、生保会社が自由に決められるようになった。
これを受けて生保業界に競争が発生し、保険料の値下げ傾向が強まったという。インターネットの普及やシステム導入により、低コストの保険販売が可能になったことも追い風となっている。7年以上前に契約した人は、見直しを検討した方がよいだろう。
保険商品に対する顧客の考え方の変化も大きい。10年前は生命保険にも貯蓄性を持たせるものが多かったが、最近は貯蓄と保障を分けて考える人が増えた。それに応じて「掛け捨て」商品が主流になりつつあり、特約を絞り込んで保険料を安くできる商品も登場した。
例えば、オリックス生命の10年前定期保険「ダイレクト定期(現在は販売終了)」と最新の「Bridge(ブリッジ)」を比較すると、保険金額1,000万円、保険期間10年の場合、20歳女性の月払保険料は1,320円から684円と48%も下がっている。
医療保険でも、10年前の「オリックス終身医療(現在は販売終了)」と最新の「医療保険CURE(キュア)」を比べると、入院給付金が日額5,000円の場合、40歳男性の月払保険料は10年前の4,310円から2,390円へと44.5%も減っている。50歳では6,075円から3,455円まで下がり、その差は2,620円だ。
掛け捨てというと何となくもったいない気もするが、この低金利下では解約返戻金での大きな上乗せは望めない。それならば保険料が下がった分を、別の形で運用したり現金として使ったりした方が得というのもひとつの判断だ。
健康保険が適用されない「先進医療」を保障に含める商品も
「医療の進歩」で目につくのは、医療機関の設備充実や技術の進歩によって、短い期間で退院できるケースが増えたことだ。これを受けて、最近の医療保険では、必要な保障に細かく対応する変化が見られる。
10年前は入院給付金の対象は「2日以上の入院」からだったが、前出の「医療保険CURE(キュア)」は「日帰り入院」にも対応してくれる。顧客にとってはかなりありがたい変化だ。1入院あたりの支払限度日数が以前より短くなっている一方で、通算の支払限度日数が増えている。
健康保険が適用されない「先進医療」には、10年前には給付金が出なかったが、最新の商品では通算で1,000万円程度が給付される。以前は治療方法がなかった病気に新たな治療方法が開発されたことで、保障対象となる場合もあるだろう。
加えて、高齢者の入院が多くなっていることを反映して、契約可能年齢の上限も70歳から75歳に伸びている。いずれも、医療技術の発達を受けて顧客ニーズが変化し、保険会社が対応を迫られた結果である。
競争が激化している生保業界では、顧客ニーズをいかに取り込むかが勝負の分かれ目となっている。保険商品の見直し機会が来たときは、面倒がらずに同じ会社や他社で開発した新しい保険商品をチェックしなおした方がよさそうだ。保険料を下げつつ、自分にピッタリ合った保障内容の保険が出ているかもしれない。