「節約」と「ぜいたく」が生んだ日本アニメのイノベーション

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「マトリックス」も影響を受けた80年代の実験

   当時のアニメーターたちにとって、テレビアニメは格好の実験場でした。『うる星やつら』や『GU-GUガンモ』で面白い動きを実験していたアニメーターたちは、現在では劇場アニメの主力アニメーターや映画監督として活躍しています。

   80年代前半に手塚式の「節約」が行きつくところまで行きついた感もあり、新たな表現を求める若手アニメーターたちにとってはいいタイミングだったともいえます。「暴走」といわれながらも、嬉々として毎日実験していました。

   この「ぜいたく」な実験の結果、実写映画のようなレイアウトや動きを追究する流れもできました。「アニメなのに実写みたい!」という評価が、アニメーターに対する最大級の賛辞と受け取られた時期もありました。

   写実的な描写の賛否はともかく、この時期の日本アニメの工夫が、映画『マトリックス』やディズニー版『リトル・マーメイド』『美女と野獣』の画面レイアウトや動きに影響を与えたといわれています。

   こうやって考えると、日本のテレビアニメは60年代の「節約」のなかで育ち、80年代の「ぜいたく」を経験してきたからこそ、「静」「動」の魅力が同居するジャパニーズアニメが開花したのかもしれません。(数井浩子)

数井浩子(かずい・ひろこ)
アニメーター、演出家。『忍たま乱太郎』『ポケットモンスター』『らんま1/2』『ケロロ軍曹』をはじめ200作品以上のアニメの作画・演出・脚本などに携わる。『ふしぎ星の☆ふたご姫』ではキャラクターデザインを担当した。仕事のかたわら、東京大学大学院教育学研究科博士後期課程に在籍。専門は認知心理学
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