きのこやにんじん、トマトなど家庭料理で使う野菜を干して、旨みが凝縮された味を楽しむ「干し野菜」が人気を高めている。インターネットのレシピサイト「クックパッド」には、干し野菜の作り方や干し野菜を使ったレシピが100件以上投稿され、出版界でも干し野菜をテーマにした書籍やムックが続々と発行されている。
干し野菜とは、その名の通り、野菜を天然の日差しのもとで干して、生野菜とは違った味わいを楽しむことだ。方法は簡単で、手元にある野菜を小さく切り分けて、カゴやザル、あるいは、新聞紙などの上に並べて、庭やベランダで干すだけ。場所も取らず、特別なスキルもいらない。誰でもすぐに始められるのだ。
簡単に始められて、メリットがいっぱい
日光のあたる風通しの良い場所で干すのがオーソドックスなやり方だが、電子レンジやオーブントースターを使って短時間で乾燥させてしまう今の時代ならではの手法もある。外干しの場合、季節は乾燥しやすい秋から冬がベストシーズンだ。
干し方もいろいろで、庭や縁側がある一戸建ての家なら大きめのザルにダーッと並べてしまうのがいいだろうが、都会のマンション住人には、洗濯用の物干しざおにひっかけるだけでよいカゴタイプが人気だ。最近は、干し野菜のための専用の編みカゴも各種発売されている。
干し野菜の魅力は、なんといっても簡単に始められることだが、それでいて、いろいろなメリットがある。生シイタケと乾燥シイタケを比べれば分かるように、野菜は干すことで旨みや甘みがギュッと凝縮され、より美味しく味わえるようになる。歯ごたえも良くなるので、生のときとは違った食感が楽しめるし、乾燥させれば生状態よりも保存が効くため、経済的な面でもプラスというわけだ。
しかも精神衛生上のメリットもあるようだ。東京都内でマンション暮らしをする40代女性は「料理で使い切れなかった野菜を冷蔵庫で干からびさせてしまうと罪悪感が残るけど、余った野菜を干しておけば、少し長持ちさせることができてポジティブな気持ちになれる」と、その効用を話す。
干し野菜は、お金をかけずに自然の力を借りて生活を豊かにしているという「エコな感じ」も人気の理由の一つなのだろう。