社会保険労務士・野崎大輔の視点
会社は授業料の肩代わりをする必要はない
会社が社員に残業命令を下せるのは、労働者代表などと労使協定(36協定)を締結し、かつ就業規則に「残業させることがある」旨を明記している場合に限られます。逆にいえば、このような手続きを適切に行っている場合には、社員は原則として残業を拒否することができません。ただし、36協定で定めた延長限度時間を超えて残業させることはできません(特別条項に「大規模なクレームに対応する場合は適用除外」などと定めた場合を除く)。
サポート部にいる限り、急な残業に対応してもらわざるを得ないので、A君は就業後の定期的なスクール通いは難しいということになるでしょう。残業命令を断った場合には、解雇の対象にもなりえます。これを避けるには、部署を異動してもらうしかありませんが、会社としてそれが難しければ、A君にその旨を説明して辞めてもらわざるを得ないでしょう。会社はA君が英会話スクールに行けなかったことによる損失の責任を負わないので、授業料の肩代わりをする必要はありません。